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95 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 27 56 ID oGzxMSGI [2/8] 入院生活といえば、誰もが一度は甘いイベントに遭遇する事を考えるのではないだろうか。 隣のベッドに美少女が入院していたとか、看護婦さんとドキドキ体験とか、そういったものに、少なくとも俺は淡い期待をしていた。 だが、何をどう間違えたら、こんな風になるのだろうか。 今俺は、自分の病室と同階の、娯楽待合スペースのソファに座っている。 向かいには、ぱっと見で30代前半に思える、ざっくばらんな印象の男が、片膝にあぐらをかき、頬杖をついて座っている。 俺達の間には小さな机があり、その上には正方形の板が一枚、さらにその上には、白と黒の両面のチップがいくつも乗っている。 正方形の板には、さらに細かく64個の正方形を作るように線が描かれており、4つのスミのうち、3つは白面のチップが乗っている。 向かいにいる男(俺は"おっさん"と呼んでいる)は、指先にチップを挟むように持ち、黒い面を上向きにして、板面に置いた。 そう、俺達は俗に言う、オセロというゲームをしているのだ。 「これで積みだな、坊主。」 「…くあぁ~! なんで角3つ押さえたのに負けるんだ!? おっさん強すぎだぞ!?」 オセロは一般的に、角さえ押さえれば大きく有利をとれるゲームだ。 序盤から中盤にかけては、俺の方が有利に動いていた。それなのに、いつの間にか黒面の数が白のそれを上回っていた。 「まぁまぁそうしょげるなって。おっさん戦ってて楽しかったぜ?」 おっさんはどこまでも軽妙な口ぶりで、そう言った。 ちなみに今までの戦績は、24戦24敗。一度たりとも勝った事がないのだ。 「さて、今日はこの辺で切り上げとくかい。んじゃな、坊主。」 おっさんは勝負がつくと、オセロを手早く片付け、娯楽スペースにもとあった場所に戻し、去って行った。 「ちくしょう…今日も勝ち逃げされた。」 おっさんと俺が勝負するようになったのは、ほんの数日前だ。 傷もだいぶ治ってきた辺りで、暇潰しに病院内をぶらぶらするようになった頃、たまたま俺は娯楽スペース付近を通りかかった。 その時、一人でオセロをしている変なおっさんがいたのだ。 詰め将棋ならぬ詰めオセロかよ、と思い俺はその場を離れようとした。すると、 「おい待て、坊主。」 といきなり呼び止められたのだ。 何だ、喧嘩売ってんのか。と思った俺はおっさんの側へ行き、「何だよ」と返した。 だがおっさんは次に、こう言った。 「お前、強そうだな。どうだ、おっさんと勝負しないか?」 「は? 勝負?」 「そ。こいつでよ。」 96 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 29 02 ID oGzxMSGI [3/8] それ以来、俺達は一日2~3回は勝負する仲になったのだ。 しかしおっさんは、本当に強かった。おっさん曰く、俺は今までの対戦相手の中で1番強いらしいが、それもどこまで本当なんだか。 だが俺は、負けっぱなしではいられない性分だ。 俺は今日の対戦を思い返しながら、自分の病室に戻った。 「あら、やっと帰って来たわね。」 病室には姉ちゃんが来ていた。俺の頼んだ品を持ってきてくれたようだ。 「入院生活が暇だからってオセロって…」 「ちょっと腕を鍛えたかったんだ。助かったぜ、姉ちゃん。んじゃ早速…」 姉ちゃんは俺の意思を先取りしたかのように、オセロの板面を開いた。 それを受けて俺も、ベッドに腰掛けた。 「鍛えるって言ったって…飛鳥に勝てる人なんかいないでしょう。 私だって、小学生の時のあんたに勝てなかったんだから。」 「それは昔の話だろ? とりあえずクリアマインドを会得するまで協力してくれよ。」 「何よ、そのクリアなんとかって…」 姉ちゃんはぶつくさ言いながらもチップを手にとり、対戦する意欲を見せた。 「先攻は私ね……」 「ほい。……」 「………」 「………」 「………やっぱりあんた強いじゃない…。」 「そうか?」 板面は、あっという間に白で埋め尽くされてしまった。 「姉ちゃん…ぶっちゃけ弱い?」 「あんたが強いのよ! 全く、変なとこばっかり器用なんだから… やるなら結意さんとか隼とかとしなさいよ。数年経ってもボロ負けなんて、正直へこむわ。」 姉ちゃんは板面があるのも無視して、ベッドへ突っ伏す。 はたから見たら幼女のふて寝にしか見えないが、それを言ったら余計機嫌を損ねるので、心の内に留めておく。 「ああでも、やっぱあんたの声聞くと、安心するわ。」 「何で?」 「さあ…何でかしらね?」 「!」 姉ちゃんは一瞬だけ、不思議な表情を見せた。 それは、今まで姉ちゃんからは見たことのないものだった。 だけど俺は、その感情をよく知っている。 「ねぇ、飛鳥。私の中には、明日香の記憶が受け継がれてるの。…もし、明日香の感情も…」 「やめてくれ、姉ちゃん。」 俺は姉ちゃんが言い切る前に、言葉を遮った。 97 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 30 05 ID oGzxMSGI [4/8] 「俺は、姉ちゃんとずっと一緒にいたいんだ。…それを言ったら、そうもいかないだろ?」 「飛鳥…うん、そうね。ありがとう。」 姉ちゃんはベッドから顔を上げ、散らばったオセロをまとめだした。 俺もそれを見て、一緒に手伝う。 チップを集めているうちに、何度か手が触れ合う。姉ちゃんの手は、少し冷たかった。 オセロを綺麗に箱にしまうと、姉ちゃんはベッドの横にある椅子の上に置いた。 「じゃあ…私、そろそろ行くわね。また明日ね。」 「ああ。知らないおじちゃんに声かけられてもついてくなよ?」 「何よそれ? 私だってもう21なんだからね? もう…」 ぱたん、と病室のドアは静かに閉められた。 客人がいなくなり、病室には静寂が漂う。 ベッドはいくつかあるが、この病室には俺しか患者がいないのだ。 見舞いにきてくれる連中以外と、会話することなんざ殆どない。 そういう意味では、あのおっさんとのオセロも、寂しさを紛らわせる事にはなっているのかもしれない。 あるいは、あのおっさん自身も…? * * * * * 病室から逃げるように出た私は、少し距離をおいてから、そこで胸を抱えて座り込んでしまった。 押し潰されるような、締め付けられるような苦しさが、ずっと消えないのだ。 それはもう何日も続いている。 「ん…? あんた、神坂の姉さんじゃないか。」 頭上から、声がした。やや低めで、少し気だるそうに話す口調には覚えがあった。 「佐橋君…? お見舞いかしら?」 「ああ、暇潰しにな。」 感情のぶれがばれないように、笑顔を作って顔を上げた。 「あの子、オセロの対戦相手を探してるのよ。」 「オセロ? それはまた唐突だな。」 「よかったら、対戦してあげてちょうだい?」 「ああ、そうさせてもらうよ。ところであんた…何で今にも泣きそうな顔してるんだ?」 「えっ…!?」 作り笑いが、できてなかったのだろうか。それに、今にも泣きそうって… 私が、そういう風に見えたというの? 「あんた自身、わかってないはずがないよな? どうしてあんな真似をした? 神坂の妹の記憶を引き継ぐなんて、危険だとわかってただろう? 現にあんたの心は、明らかに不安定じゃないか。」 「…私が、あれと同じ事を繰り返すと、思っているの?」 「可能性はある。人の心ってのは、時にはそれだけ強くもなるし、弱くもなる。」 「知った風な口を訊くわね。でも、貴方には理解できないでしょう!?」 図星を指されたためか、語気が少し荒くなった。 それに気づき、私はため息をひとつつき、呼吸を整えようとする。 「理解はできない。だが、かつてそうやって苦しんだ奴が、身近にいたもんでな。」 「身近に…?」 「光がそうだった。あいつは、二つの心を持っていたんだ。 今でこそ落ち着いているがな。」 佐橋君はそう言うと、視線を反らして飛鳥の病室の方へと歩いていった。 もう言うことはない、という事だろう。 98 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 30 58 ID oGzxMSGI [5/8] …私だって、こんな状態になるとは思っていなかった。 あの日、明日香の遺体を弔いに行った時。明日香の痕跡をこの世から消したくない。私はそう願った。 その瞬間、明日香の見て、聞いてきた全ての事が頭の中に流れ込んできたのだ。 知らなかった、では済まされない。 でもあの娘の背負いつづけていた心の闇が、こんなにも重く、胸を締め付けてくるなんて。 そういう意味では、私は何もわかっていなかったに等しい。 ---飛鳥を自分だけのものにしたい。 その感情を、私は必死に抑えつづけている。 それは、絶対に知られてはならない秘め事。 色んな事があって、ようやく訪れようとしている、みんなが望んでいた平和な日常。 私自身がそれを壊す存在になど、なりたくない。 力の抜けた足腰に鞭打ち、私は病院の外へと向かった。 自宅から病院へは、私は明日香の使っていた自転車で来ている。 今の季節は大分肌寒いが、少しは気が紛らわせられる。今の私にはちょうどいいくらいだ。 疲れを知らない私の体は、いくらペダルを漕いでも暖まらない。 自転車でも20分以上はかかる距離を飛ばして家に着く頃には、体は冷えきっていた。 自転車を所定の場所にしまい、家の中に入る。 中は、私一人で過ごすには広く、静かすぎる空間だ。 …飛鳥も、私がいない間は同じ思いをしていたのだろうか。 自分一人だけが取り残され、誰にも必要とされない、という思いを。 飛鳥はまだいい。あの子には結意さんがいるから。 だけど、私を愛してくれる人は何処にもいないのだ。 そう考えたと同時に、自嘲の笑みが浮かんだ。 そんな人がいたからって、何になるのだろう。私と同じ時間を生きられる人などいやしない。 第一、私は子孫を残せない体なのだ。だから、そんなもの必要ない。 次第に、思考がネガティブに堕ちていく。その時、私はさっきの飛鳥の言葉を、不意に思い出した。 『俺は、姉ちゃんとずっと一緒にいたいんだ。』 ぞくり、と体中に電流が走った。 飛鳥は、私を必要としてくれている。ずっと一緒にいたい、と言ってくれたじゃないか! そう思い始めると、もはや理性で抑えることはできなかった。 これは明日香の記憶の影響だ。私自身が望んでいる事じゃない。そう頭でわかっていても、微熱を帯び始めた体を、抑えられない。 何でもいい。あの子の痕跡があるものが欲しい。私はふらふらとした足取りながらも、飛鳥の部屋へ真っすぐに向かった。 部屋の扉を開け、中に入ると、そこには私が望んでやまないものがあった。 「あは………飛鳥の匂いがするぅ…」 違う。こんなのは私じゃない。なのにどうして、体は止まらない? 床に膝をつき、飛鳥のベッドに顔を埋ずめる。 だらしなく体を弛緩させながらも、右手は乳房をまさぐり、左手は下着の中へ向かっていた。 すでに下着の中は粘液が滴り、指先に執拗に絡みついてくる。 「はぁ、はぁ…あすかの…においぃ…」 99 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 31 41 ID oGzxMSGI [6/8] ベッドシーツを噛み締め、唾液を含ませ、それを思い切りしゃぶる。 鼻孔から感じられる飛鳥の残り香、ベッドから伝わってくる(ような気がする)、飛鳥の温もりがより一層、体の感度を高め、私の理性を壊す。 指先を秘裂に埋め、ナカを静かに、徐々に大きく掻き乱す。 幾度となく背筋を貫く快感の前に、私はもう何も考えられなくなっていた。 ---欲しい。 何が? あの子のすべてが--- ただそれだけの思いで、私は自分を慰めていた。 「ひゃ、あんっ…あすかぁ…あすか、あすかぁぁぁ!」 誰もいない、静かな部屋に私の声が響く。 絶頂を迎え、体中の力が抜ける。そうすると私の関心は、他のものへと移っていった。 瀕死に追い込まれた私を飛鳥が迎えに来てくれたあの日、この家には結意さんがいた。 あの子と彼女は、愛し合っている。つまり、このベッドを… 「…っ、うわあぁぁぁぁぁぁ!」 赦さない。なんであんな奴が飛鳥を! 飛鳥の隣にいていいのは私だけだ! ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ----- そこで、はっ、と私は我に帰った。 ゆっくりと周りを見渡すと、ベッドシーツはぐしゃぐしゃになり、引きちぎられた痕跡も見受けられた。 …私は、なんて事をしてしまったのだろう。 飛鳥を思って、自身を慰めた事は度々あった。だけど、こんなにも特定の対象に憎悪を抱いたのは、初めてだ。 それも…結意さんに対して、だなんて。 100 名前:天使のような悪魔たち 第20話 ◆UDPETPayJA[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 09 32 35 ID oGzxMSGI [7/8] 私は、あの事件の後、この力を自身の手で消去した。 こんな悪魔の力をもう使う必要はない、あの時はそう思っていたから。 だけど今は、その判断は正しかったんだと、より深く思い知らされた。 仮に、再び今のように錯乱したとしよう。その時、あの力があった場合、私は何をする? …考えただけで恐ろしい。それこそ、私は悪魔と化すだろう。 皮肉なことに、力を失って初めて、あの力の恐ろしさを知ることができたのだ。 「もう………頭がおかしくなりそうよ………」 あの娘の想いが、記憶だけになっても今なお、消えずにいるなんて。 私は、間違っていたの? このままではいつか私は…飛鳥を傷つけてしまう。 明日香が、飛鳥を手に入れるために手段を選ばなかったように。
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661 :胡蝶病夢 第二話『彼の夢』 ◆YOLz5qIxQc [sage] :2009/07/08(水) 23 18 11 ID cNKewfV6 「ふあぁぁ……あれ?」 目が覚めたら身体が縮んでいたーーなんてことは無く。 「昼休み……?」 黒板の上に掛かっている時計を見ると、針は一時を指していた。ついでに辺りを見渡す。 食堂にでも行ったのだろう、教室に居る生徒の数はまばらだった。 「にしても……どんだけ寝てたんだ俺」 朝学校に来てからの記憶がまんまり無い。というか全然無い。全く無い。 学校に来る時の記憶さえ危うい。どうやって来たかあやふやだ。 「……もしや俺は寝たまま学校に来るという偉業を成し遂げたのでは?」 「んなわけあるかアホ」 しまった、口に出ていたか。そして俺をアホって言ったのは誰だ。 「……なんだ、ヒィか」 声のした方に振り向くと、袋に大量のパンを詰めたヒィが立っていた。 「なんだとはなんだ、爆睡中の親友の為にパンを買ってきておいてやったというのに」 そう言うとヒィは隣の席に腰を降ろし、袋の中身を漁り始めた。 こいつの名前は時谷 彼方。中学の頃からの付き合いで、俺の親友。 ちなみにヒィとはこいつのあだ名。「彼」方だから「He」でヒィなんだそうだ。 自称天才イケメンで金持ち。前者は半分嘘だが後者は真実。 カッコいいより綺麗と言ったほうが正しいであろう、中性的な顔立ちをしている。 「うーん……なぁ、俺どんだけ寝てたんだ?」 いくら頑張っても思い出せない為、絶賛パン捜索祭り開催中のヒィに訪ねる。 「ん? 確か学校来てすぐ俺に一言だけ言ってから今までずっと寝てたな」 一言だけ言った? 何か言ったっけか俺? 「なにか言ってたのか?」 ヒィは口元に手をあて、ふむふむと考えるポーズになる。そして 「ああ、言ってたぞ。確か……『今から俺は寝るから、うなされてたら起こしてくれ』とか」 「本当にそんなこと言ってたのか?」 「ああ、たぶん間違っていないはずだ」 今度は俺が考え込む番だった。 そんなことを言った記憶が全く無い、学校に来るときの記憶も無い。 俺の知らない俺? ……もしや 「俺は二重人格だったとか?」 「いきなり何言ってんだ馬鹿」 俺の出した結論は、未だに袋を漁っているヒィの言葉に一撃で沈められた。 「ほら、カレーと焼そばとあんぱん、これでいいんだろ?」 ヒィが袋からパンを三つ差し出してくる。さすが親友、俺の好きなパンをしっかり覚えている。 「サンキュ、んじゃ食おうぜ」 「ちょっと待った。今日は別のとこで食うぞ」 パンを受け取り、早速食べようとする俺をヒィが止める。 「ちょっと前に、もっと静かで広い場所で食いたいって言ってただろ?」 「そういえばそんなようなことを言った記憶が……」 662 :胡蝶病夢 第二話 ◆YOLz5qIxQc :2009/07/08(水) 23 21 03 ID cNKewfV6 「というわけで、屋上に行こう」 そう言ってヒィはポケットから銀色の鍵を取り出した。 「………」 俺が言いたいことが分かったらしい。ヒィはニヤッと笑うと 「職員室にお呼ばれになったときにちょっとくすねてスペア作っておいた」 「それってバレたら不味くないか?」 「大丈夫だって。あそこには誰も近寄らないから」 「どうしてそう言い切れるのかね……」 「それに……」 「それに?」 「屋上にはロマンがあるじゃないか!」 「は?」 「ほら、早く行くぞ!」 「あ、おい! ちょっと待て! ……ったく」 言うなりパン袋を抱えて教室を飛び出ていったヒィ。 「んじゃまあ、俺も行きますか」 この出来事が、俺の運命を変えることになるとも知らずに…… 「……なんつって」 思えば、これは冗談ではなく、神の啓示だったのだろう。 屋上へ向けて、一歩を踏み出す。 この時から、俺の運命は狂い始めていた。 「ところで、ロマンって何だ?」 屋上のドアの前で四苦八苦していたヒィに訪ねる。 鍵が新品だからか、なかなかうまく回らなかったようだ。 「そりゃお前、屋上と言ったら告白イベントって相場で決まってんだろ」 「はぁ……」 「案外、ここ開けたら誰か告白してたりしてな」 「ないない」 カチャリと音がして鍵が回る。 「うっし、それではご開帳~」 ドアが開き、ヒィが外に出……ようとして止まった。 「どうした? 本当に告白してる奴でもいたか?」 鳩が眉間に豆鉄砲をブチ込まれたような顔をしているぞ、ヒィ。 663 :胡蝶病夢 第二話 ◆YOLz5qIxQc :2009/07/08(水) 23 23 20 ID cNKewfV6 「……人、いたよ」 「え、マジか?」 ヒィの横から外を覗く。そこには……人がいた。 広い屋上の奥のさらに奥、フェンスの外側に、彼女はいた。 「………」 「………」 沈黙。ヒィも俺も言葉が出なかった。 俺もヒィも動かない。彼女も微動だにしない。 唯一動いていたのは、風にたなびく彼女の長く、雪のように白い髪だけだった。 「……なあ」 先に沈黙を破ったのはヒィのほうだった。 「……これってさ……止めたほうがいいんじゃないか?」 「……ああ」 頭の中で 屋上+フェンスの向こう=飛び降り の式が成り立つ。 あまり刺激を与えないように説得を…… 「もしもし、そこのお嬢さん!」 「やりやがった」 彼女がゆっくりと振り向く。 「実は大事なお話がありましてですね!」 「……?」 彼女は首をかしげる。 「えーと……貴方が好きです! 俺と付き合ってください!」 「………」 「……ってこいつが」 「おいちょっと待て」 なんか大変なこと口走ったぞコイツ。見ろよなんかすっごい驚いてるぞ彼女。 「何言ってんだオマエは」 「いや……反応が無かったからつい……」 「そういう問題じゃないだろ」 「ロマンがあったんだよ!」 「だからってお前は……ってうお!」 いつの間にか彼女が隣に立っていた。 「な、なにか……?」 何故か満面の笑顔を向けてくる彼女に恐る恐る話しかける。 「……ずっと待ってた」 「え?」 「貴方を、ずっと」 そういって彼女は、俺の顔に 自分の顔を近づけ キスを した。 そこで目が覚めた。
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282 :或る木こりの話 一話 [sage] :2008/06/17(火) 01 39 45 ID 6u6c9BFk ―――昔々のことじゃった。 ある山ん中に一人の木こりがおった。自分で小屋を建てて、独りぼっちで暮らしとった。 山には、木こり以外、二本足で立つもんはだぁれもおらんかった。木こりはそれでも気にせんかった。 なぜならそいつは、特別、人間という生き物を怖がっていたんじゃ。 木こりの身の丈は小さな杉の木ほどもあったし、座り込めば、でっかい岩みたいにしか見えんかったからの。 普通の人間が見たら、まず「バケモンだ!!」なぁんて騒ぎだすにちがいなかったんじゃ。 実際には、それ以上のことを木こりはされたんじゃな。石を投げられたり、鍬で襲われたり。 そんなもんだから、木こりは人間ってやつに愛想を尽かして、山ん中に引きこもっておったんじゃ。 寂しかったんじゃないかって? そりゃあ、寂しかっただろうよ。木こりに話しかけてくる奴なんざいなかったからな。 木こりだって食っていかなきゃならねえ。森の動物達を狩っては、腹を満たしておった。 そんなんだから、鹿も猪も鳥も、みぃんな、木こりの姿を見ると一目散に逃げていったんだ。 ところがある日、木こりの家に娘がやってきたんだな。 それもとびきり綺麗なやつが、だ。 第一話 木こりが目を覚ますのは、きまって、太陽が真上に昇る頃であった。 朝を告げる鳥の鳴き声など、木こりの住む小屋には響かない。小鳥達は、この熊のような男を恐れていて、 彼が腹を空かしていなくとも、近付くことはなかったからだ。それゆえ、スダレの隙間から差し込む陽射しが 目を射るまで、木こりは延々と眠るのが常であったのだ。 ところが、である。 その日に限って、木こりは、早く目を覚ますことになった。 森のざわめき以外の音が、耳に飛び込んできたのだ。 ―――トントントン。 当初、木こりは、それが小屋の戸を叩く音だと気付かなかった。 十数年のあいだ、そんな音を耳にしたことがなかったのだから、それも仕方のないことである。 太陽はまだ山の向こうで、崖をよじ登ろうとしている時分―――夜明け前である。 (そんな時間に戸を叩く人間が、果たしてまともなやつだろうか……?) 木こりはしばし逡巡したあと、覚悟を決め、声を出した。 「ど、どなたで?」 声を出すことすら、久々のことである。自分でも予期せぬほどの大きな声であった。 さらには、どもっていたり、所々がひっくり返っていたりで、どうにも威厳のない代物であった。 283 :或る木こりの話 一話 [sage] :2008/06/17(火) 01 41 21 ID 6u6c9BFk あまりに恥ずかしかったのか、木こりは咳払いをしたあと、もう一度、しっかりと言葉を発した。 「どなたで?」 扉の向こう側にいる訪問者からは返事がない。しかし時折聞こえる、寒風が通り抜ける時のような 震える息遣いが、“そいつ”がそこにいることを、木こりにはっきりと悟らせた。 今度は、出来るだけ敵意を感じさせないよう、柔らかな声色で戸に話しかけた。 「どなたで?」 うさん臭い声ではあったが、相手は木こりの意図を、果たして理解したらしい。 『おはようございます。申し訳ないのですけれど、一度、お顔を見せてくださいませんか?』 色で表すならば、澄んだ水色。布地で表すならば、柔らかな絹織物。そんな質感の、女性の声が返ってきた。 だが、例えどんなに美しい声の持ち主であっても、心までそうであるとは限らない。それも、いきなり 「顔を見せろ」ときたものだ。徹底的な人間不信に陥っていた木こりには、魔女の囁きにしか聞こえなかった。 「なにゆえに、おめえさまはそんなことを言うのかね?」 じりじりと後退りつつ、木こりは手を馴染みの斧へと伸ばす。 『どうしても、どうしても必要なことなのでございます。どうぞ、その斧を私に向けないでくださいまし』 木こりは仰天した。彼はまだ戸を開けていない。扉の向こうにいる女には、苔に覆われた木目模様しか 見えていないはずだ。だというのに、彼女は木こりが斧を掴んだことを知っているのだ。 (こいつはいよいよもって怪しい。きっとこの山に住む悪魔に違いあるめえ) 岩のような体を震わせて、木こりは斧の柄をしっかりと握り締めた。 『お願いします。おやめください、どうか、落ち着いてくださいまし。一目、お顔を見せていただければ、 それでよろしいのです』 女のあまりの必死な様子に、木こりもつい、気勢を削がれた。しかし、そう簡単に気を許せるほど、 木こりの人間に対する感情は緩くない。 「そんなら、おめえさま。扉から十歩、離れてくだせえ。そんでもって後ろを向いて、目をつぶっててくれ。 俺が『良いぞ』と言ったら、こっちを向いてくれ。約束してくれ、でねえと、俺は扉を開ける訳にはいかねえ」 『分かりました。あなたがおっしゃる通りにいたしますわ』 木こりは、この返事を聞いて、ほっ、と息をついた。 (魔女は、相手の目を見て呪いをかけると聞く。これならば俺が襲われる心配もあるまい。 どうせ相手は女だ、腕力なら俺に分があるだろう) 284 :或る木こりの話 一話 [sage] :2008/06/17(火) 01 55 23 ID 6u6c9BFk 木こりはそう考え、斧を椅子に立て掛けると、扉へそろそろと近付いていった。 扉を少しだけ開き、外を伺う。 (何と美しい娘だろう……) そこには、身なりこそ貧相なものの、どこか高貴な空気を纏う、金髪の少女の後ろ姿があった。 「あの……よろしいでしょうか。お顔を見せていただいても……」 木こりがしばらく見とれていると、少女がおずおずと話しかけてくる。 少女に見とれていた木こりは、慌てて、「よし、良いぞ」と返事をした。 ふわりとなびいた金髪が、いつの間にか顔を出していた朝日の光を吸い込み、燦々と輝いた。 鼻も口も小さく、小綺麗にまとまっていて、顔の輪郭は、少し丸い。こちらに向いてから、 少女はゆっくりと目を開けた。青い瞳が木こりをじっと見つめる。木こりの方はその動作一つ一つに 見惚れてしまい、もはや少女に対する警戒心を完全に失ってしまっていた。 二人はしばらくのあいだ見つめあっていたが、やがてその均衡は、少女によって破られることとなった。 突然、少女の瞳に涙が溢れだしたのだ。 「ああ! 神様! ようやく会わせてくださったのですね!」 豊かな金髪で、とめどなく流れだす涙を拭い、わんわん声を上げた。 困ったのは木こりである。顔を見た途端に泣き出されたのだから、どうすることもできない。 (ああ……やはりこのお嬢さんも、俺を怖がるのだ) 昔から、木こりを見る女の顔は二つと決まっていた。 一方は、まるで糞尿でも見るかのような嫌悪に満ちた顔。もう一方は、化け物にでも出会ったように怯える顔だ。 この少女も例に漏れず、自分の容貌に恐怖しているのだ、と木こりは思った。 ごつい手で顔を覆い、小さく呻いた。 ところが、そうではなかったのだ。 「本当に、長かった。あなたに出会う日をずっと心待ちにしていたのです!!」 少女は駆けだし、木こりに抱き付いたのだ。 「へええ?」 木こりがこんな間抜けな声を出してしまったのも無理はない。 今までの経験とは全く別の、異質の反応である。恐れられこそすれ、涙するくらいに喜ばれたことなど、 一度もないのだ。少女は嗚咽を繰り返し、木こりの纏うぼろ切れの裾を掴んでいた。 もう二度と放しはしない、とでも言うかのように。 285 :或る木こりの話 一話 [sage] :2008/06/17(火) 01 59 28 ID 6u6c9BFk ※ ※ ※ ※ ※ 「私の目には、人間が人間に見えないのです」 かび臭い小屋の中、木こりと少女はテーブルを挟んで座っている。 互いの目の前では、お茶が、ぽつぽつと湯気を浮かべていた。木彫りのコップを手に取り、唇を湿らすと、 少女は再び話を始めた。 「生まれたときから私の目はこうなのです。お父様もお母様もお兄様も、みんな枯れ木にしか見えないのです」 「それはどういったわけで?」 木こりは困惑気味に質問する。 「分からないのです。とにかく、私には生きている者が全部、枯れ木にしか見えません。体の大きな方は、 太い幹の枯れ木に。小さな方は、細くて、今にも折れてしまいそうな枯れ木に、という具合にしか 見えないのでございます」 少女の目には、再び涙が溢れだしていた。きっとこれまでのことを思い出したのだろう。 (しかし、本当にそんなことがあるのだろうか……?) 木こりは、少女の言葉が真実なのか、今だに確信を持てないでいた。 「お医者さまには話さなかったのかね?」 「ええ、ええ。もちろんしました。ですが、お医者さまは、まったく信じてくださらないのでございます。 お医者さまだけではございません、誰も私の話を信じてはくださいませんでした。私は、自分が 大変恐ろしくなりました。だって、この世界には、私以外、枯れ木しかいないのです。 犬は、四本の根っこで私に駆け寄ってきては、めりめりと不気味な音を立てて尻尾を振りますし、 小鳥達ときたら、木屑が空に浮いているようにしか見えないのですもの。それに、私にはもう一つ、 不思議なものがありまして、命のないものとお話が出来るのです。例えば、本当の木とか、家とか。 私がそんなものとばかりお話をするものだから、お父様もお母様も、すっかり怯えてしまいまして。 いたたまれなくなって、私は我が家を飛び出したのです」 お茶の表面に、波紋が広がった。少女の涙は、止め方を忘れてしまったかのように、零れだす。 人と話すことが久々な木こりに、少女の慰め方など分かるわけもない。図太い体でおろおろと周囲を見回す。 当然、小屋には誰もいない。木こりは改めて「ああ、俺は今、人間と会話をしているのだ」と認識した。 「そうか。それで、さっき、俺が斧を持っていることが分かったのだね?」 286 :或る木こりの話 一話 [sage] :2008/06/17(火) 02 00 39 ID 6u6c9BFk 「ええ。この小屋の戸が、教えてくれました。うちの主人は大変怖がりなのだ、とおっしゃっていましたわ」 何がおかしかったのか、少女はくすくすと笑った。相変わらず涙は、零れ続けているが、 気分は楽になったようである。その後、顔を引き締めると、少女はこう言った。 「私は、枯れ木以外の生き物をずっと探しておりました。そして、ようやく見つけたのでございます」 それまでの会話から予想はしていたものの、それは、木こりにとってやはり衝撃的な事実であった。 (なんてことだ……。人間から化け物と罵られてきた俺が、よりによって……) 「初めてヒトをヒトと、分かりました。あなたさまを見て」 (このお嬢さんには、人間にしか見えないのだ) 少女は真っ直ぐに木こりを見つめ、木こりはそれを避けるように深く俯いた。 「どうか、どうか私をここにおいていただけないでしょうか?」 木こりを穴が空くほどに見つめ、少女は懇願するのだった。
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245 :あなたのために 第四話 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/06/06(土) 00 13 45 ID uUb2CVRa 「やれやれ、とんだ茶番に付き合わされたものだね」 私は自分の足元に転がっている、氷室さんを見降ろして呟く。 右手に剃刀の柄を握り締めたまま、地面に横たわり、気絶している彼女を。 対する、私の姿はと言えば、右手に先程氷室さんの首筋に打ち込んだ手刀の形を作ったまま、氷室さんを見下ろしている。 「マサト・・・君が氷室さんの気持ちにさっさと気がついていれば、こんな事にはならなかったんだ。わかっているのかい?」 しかし、目の前のマサトは、青ざめた顔で、 地面に横たわっている氷室さんを抱きあげることにご執心だ。 私の言葉など聞いちゃいないようだった。 「安心し給え、気絶しているだけだよ」 氷室さんが呼吸をしている事を確認したマサトは、大きく息を吐く。 そして、いとおしそうに彼女の長い髪を撫でる。 「ミク、どうしてこんな事を・・・」 「氷室さんは君の事が大好きなんだよ。幼馴染としてじゃないぞ?一人の男として、愛しているんだ」 私がそう告げると、マサトは驚いたように瞳を見開いた。 顔を上げ、こちらを見るマサトの表情は驚きに満ちている。 ・・・やはり気がついていなかったか。 身近な幼馴染の愛情に気が付け無いなんて、君はなんて鈍感なんだ? 「そんな、嘘でしょう先輩?ミクはただの幼馴染で、僕に恋愛感情なんか・・・」 「やれやれ、当事者というものは実に恐ろしいものだね。君はどれだけ自分を客観視していないんだい?」 君たちに初めて出会ったとき、私は二人が既に恋人同士なのだとばかり思っていたよ。 しかし、目の前のこの鈍感バカのお陰で、氷室さんが苦しい恋をしているのはすぐに気が付いた。 自分に向けられる熱っぽい視線を、見事なまでにスルーし続けるマサトの天然ぶりには呆れてものが言えなかったね。 マサトと話している私を見つめる氷室さんの視線に、流石の私も何度背筋が凍った事か。 「ただの幼馴染が毎日お弁当・・・いや、朝昼晩、全て作ってくれているそうじゃないか?普通の幼馴染がそんな事をしてくれると本当に思っていたのかい?」 「でも、それは僕の母親に頼まれているからで・・・。あの、じゃあ毎日起こしてくれたり、掃除や洗濯してくれているのも?」 「そうか、氷室さんはそこまで君に尽くしているのに捨てられたのか。いやいや、同情を禁じえないね」 246 :あなたのために 第四話 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/06/06(土) 00 16 34 ID uUb2CVRa そこまでマサトに尽くしておいて、挙句に捨てられる氷室さん。 私もあの人に人生のすべてを捧げているつもりだが、もしも捨てられたりしたらどうなるか・・・。 フフ・・・その時はあの人の手足を切断して、監禁してあげればいいだけだ。 もちろん、それは最後の手段だけれどもね。 「でも、じゃあどうしてミクはマサキ先輩を・・・?僕はあなたに振られたのに・・・」 「さぁ?それは彼女本人から直接聞いてみたらどうだい?・・・私には理解できないからね」 愛する幼馴染が、意中の女性と結ばれ、幸せになるのなら、自分は捨てられても構わない。 自分よりも、彼の幸せが第一だと。 マサトの幸せこそが、氷室さんにとってきっと全てなのだろう。 ・・・私には理解できないがね。 だってそうだろう? 私無しに、あの人の幸せが成り立つはずがないのだから。 私は、そう断言できる。 私以外にあの人を幸せに出来る人間など存在しない。 例えあの人が、他の誰かを何かの間違えで好きになったとしても、それはその泥棒猫に騙されているにすぎない。 その時は、その泥棒猫を私は全力で排除する。 それが、あの人にとっての最高の幸せなのだから。 「ただ、マサト。君に解って欲しいのは氷室さんが、彼女こそが世界で最も君の事を愛しているという事だ。彼女は君の幸せの為に、壊れた。それだけは間違いのない事実だよ」 「・・・ごめん、ミク。僕が君をここまで追い詰めてしまったんだね?」 そう言ってマサトは、気絶している氷室さんを再び見つめ・・・涙を流した。 氷室さんに恋愛感情を抱いてはいないらしいが、それでも彼女が大切なのは確かなのだろう。 ・・・やれやれ。マサト、君は氷室さんの近くにいすぎたんだ。 本当はお互いに無くてはならないほど大切な存在なのに、その大切さに気が付かない。 空気や水みたいなものさ。普段は全然、そうとは気が付かなくとも、いざ無くなれば慌てる事になる。 それが幼馴染の関係。 失ってから初めて気がつくというものさ。 ・・・私のお陰で失わずに済んだ事を感謝したまえよ? 「マサキ先輩、僕はこれから・・・どうしたらいいんでしょう?どうすればミクに償えるんでしょうか?」 247 :あなたのために 第四話 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/06/06(土) 00 19 17 ID uUb2CVRa 「簡単なことさ、彼女を愛してあげればいい。・・・ああ、拒否権は無いぞ?君の恋愛感情なんぞ関係ない。今まで散々尽くしてもらってきたんだ。今度はそのお返しに彼女を愛してあげろ。・・・死ぬまで、その人生を賭してね」 氷室さんが自分にとって、どれだけ大切な存在かを気付く事が出来たマサトが、これから彼女を愛していくことが出来るかは解らない。 だが、それは今後の二人の問題だし、私の関知することでは無い。 ただ、私と同じく幼馴染の男性に人生のすべてを捧げている、氷室さんに少しばかりの情けを掛けてあげたくなったのさ。 本来ならば、私に襲いかかってきた処で、返り討ちにしてあげる所だが。 ちょっとばかりの同情を感じて、マサトを呼び出してあげた。 ・・・フフフ、まぁ、がんばりたまえ。我が同志よ。 「ああ、ちなみに幼馴染同士は必ず結婚しなくてはいけないと、法律にも書いてあるらしいぞ?結婚式には呼んでくれたまえ」 「・・・書いてませんよ、そんな事・・・」 そうなのか?・・・まぁ、いい。法律など、私には関係のない事だ。 私は是が非でも幼馴染のあの人と結婚するつもりだし。 「それじゃあ、私はこれで失礼させてもらうよ?」 ・・・私は氷室さんの手から零れ落ちた剃刀を拾い上げると、懐に忍ばせた。 ちょうど、普段使っている剃刀に刃毀れが目立ってきたところだ。 慰謝料代りに貰っておいても罰は当たるまい。 私は二人に背中を向けると、颯爽とその場を去ることにした。 さて、せっかく授業をサボって時間が出来たのだ。 この際、まっ昼間から愛しの君を愛でに行く事にしよう。 それぐらいの報酬は受け取っても構わないだろう? ・・・最後に、ちらりと振り返り、二人を見る。 マサトが、氷室さんの唇に口付けをしていた・・・。 あーあ、もう、やんなっちゃうなぁ・・・!! あともうちょっとで彼を誘う事が出来たのに。 大体、何なの?あの変な女。 ちょっと綺麗だからって、無表情で無愛想で、まるで人形みたい! いきなりお喋りしていたあたしと彼の間に入ってきて! 幼馴染だぁ??知らないっての!! 高校の制服着てたから、たぶん彼の一個か二個下なんだろうけどさ。 彼女でもない癖にベタベタしちゃって! 248 :あなたのために 第四話 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/06/06(土) 00 22 13 ID uUb2CVRa ・・・大体、彼も彼よ。私と遊びに行く約束してたのに、あんな子が来たからってだけで、取り止めにしてさ! しかも、デレデレ鼻の下伸ばしてやんの。 男ってのは、ああいう人形みたいなほうがいいの?理解できないわ。 あーあ、彼ってばホントにイケメン。だから、彼氏に出来たら、友達に自慢できるんだけどなー。 性格はすっごく天然臭いから、ちょっとモーション掛けてやれば簡単に落ちそうだけどね。 ・・・あ、でもあれだけかっこよくて、今まで彼女が出来た事無いらしいから、何かあんのかな? ブルル・・・。 うう、寒い・・・。雪降って来てんじゃん。 流石に冬の夜道は冷え込むわね・・・調子乗って友達とカラオケ行かなきゃ良かった。 もうあたり真っ暗だし。 なんか、例の殺人鬼が出没しそうで怖いわね。早く帰ろう・・・っと。 よーし、明日こそは彼を食事に誘って一発決めてやるわ! あんな高校生の人形女に盗られる前に決めてやるんだから! ・・・あー、寒い。ホンっと、冷えるわね。 「こんな夜中に一人で歩くのは関心しないね、泥棒猫さん」 スパッ。 私が思わず声のする方に振りかえると、喉元にいきなり風が走った。 振り向いた先にいるのは、日本人形みたいな顔した、例の女子高生。 なんであんたがこんなところにいるの? ・・・と、喋ろうとしたけど、無理だった。 だって、私の喉元から紅い液体が噴出したんだもの。 え?なんなの、これ?・・・どういう事? 「フフ、泥棒猫と呼ばれて振り向くなんて、自覚でもあったのかい?」 人形女の右手には剃刀が握られていて、歯の部分にわずかに血痕が付着している。 どうして、この子が剃刀なんて持ってるんだろう? え・・・嘘・・・そんな、あたし、この子に喉を切り裂かれた!? まさか・・・この子がいま世間を騒がせている・・・。 「あがっ・・・ぐぶっ・・・」 喉元から噴き出した鮮血で言葉が発せられない。 しかも、とんでもない激痛に意識が飛んでしまいそうになる。 「フム、中々いい切れ口だ。これは氷室さんに感謝しないとね」 女子大生ばかりを狙う、通り魔殺人の犯人がこの子だったなんて。 信じられない。 249 :あなたのために 第四話 ◆PLalu2rSa. [sage] :2009/06/06(土) 00 23 50 ID uUb2CVRa 喉元から血が湧き上がってきて、呼吸が苦しい。 どんどん意識が朦朧としていき、あたしは地面に倒れこんでしまった。 あたしの喉からはどんどん血液が流れ出て行って、コンクリートの地面がみるみる赤くなっていく。 あたし・・・死ぬんだ・・・ 「自分が殺される理由が分からないって?なら教えてあげるよ。・・・君があの人に近づいたからさ。あの人に近づく泥棒猫どもは一人として生かしておけないね。私は絶対にあの人を他人に渡したりしないよ。フフフ・・・おや?」 薄れていく意識の中で、人形女の顔がおぞましいほどに歪んでいるのが見えた。 まるで三日月のように、真っ赤な口元が歪んでいる。 ・・・やがて、あたしの耳に最後の言葉が流れ込む。 「おやすみ、泥棒猫さん。次は本当に猫にでも生まれ変わって、私のあの人にはもう手を出さないでくれよ・・・フフフ・・・アハハ・・・アハハハハハハハハハハハハハハハ!」
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112 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03 13 55 ID STlZt21Q 駅前から少し離れた雑居ビルの一階に位置する喫茶店、ブレッド。 ガラス越しに店内の様子を覗いてみると女性の客が一人だけいる。 知っている顔だった。高校時代の同級生、久坂葵。この地域では有名な富豪の生まれだ。 緩いウェーブの掛かった長い黒髪に均整のとれた顔立ち、特徴的な大きな円らな瞳が一際目立っている。 紺色のシャツに、多分下はそこらで売っているようなデニムだろう。 黒縁の伊達眼鏡を掛け、地味目に装っているが遠目から見ても分かる様なお嬢様らしい気品が溢れている。 手持ち無沙汰そうにひとさし指に髪を巻きつけては頬杖をついて俯く。 どこか憂いを含んだ瞳だったが、葵は俺に気づいた途端、目の色を変えてにこりと笑った。 俺は愛想笑いで返し入り口の蝶番を軋ませる。 ドアに無理やり付けたであろう大きいベルが派手に音を立てた。 「らっしゃい」 店内にはボサノバ風の落ちつた曲が流れている。いい加減なマスターの声とマッチしていなくもない。 マスターに軽く会釈をして彼女のいる席に向かい、相対するように椅子に腰掛ける。 それからマスターが頭を掻きながらコップ一杯の水を差し出し、スタスタとカウンターの奥へ入っていった。 水の飲み干し葵を一瞥する。 「あー君は今までどこに行ってたんですか?」 それが彼女の第一声だった。俺はわざとらしく重い溜め息をつく。 「……分かってる癖に」 葵は悪戯っぽくふふっと微笑んだ。 「もう五年も経つのか。去るものは日々に疎し、もう忘れられたと思っていたがな」 「私は自分でも嫌になるくらい執着する女のようです。すいません、カプチーノ一つお願いします」 自嘲気味にそう言い、ついでに注文する。 カウンター奥から出てきたマスターがメモ帳に何か書き込み、今度は面倒そうに俺に目を向ける。 「水をもう一杯」 「公園の水でも飲んでろ」 おお手厳しい。 「それが客に対する態度かね?」 「客は商品を買う。金が無いなら帰れ」 口を開くたびに険悪になる俺とマスターのやりとりを葵が止めた。 「マスターさん!あー君に酷い事言ったら許しませんよ!私が払いますからブラックお願いします!」 マスターがばつの悪そうな顔をしてチッと舌打ち。そしてカウンターの奥に引っ込む。 「俺のことになるとすぐ怒るのは変わらないな」 「……みたいですね」 俯き加減で恥ずかしそうに葵が言った。 「えぇと、その、お知り合いなんですか?」 「ああ、あいつは大塚。小学校からの付き合いだ」 「えっ」 葵が素っ頓狂な声をあげ、目をしばたたいた後、「それはすいません」と軽く頭を下げた。 過去の友人に怒鳴った事を謝っているのだろうか。俺には分からない事だが。 113 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03 14 30 ID STlZt21Q 大塚が熟練の技を披露しつつコーヒーを淹れる姿を見ていると、「こっちみんな」と言われた。 仕方なく葵に視線を戻す。だが特に話すことが無い。 今度はこっちが手持ち無沙汰になり、ぼんやりしていると唐突に葵が口を開いた。 「私が今日ここに呼び出した理由、解っていますよね?」 口を引き結び目が据わっている。舌先三寸で誤魔化すな、ということか。だが、ここはあえて。 「解らないな、ようやく連絡がついた元恋人との再開を楽しむ為か?」 「それもありますが……本質ではありません」 大方想像は出来ている。次に彼女は連れ戻すと言うだろう。 葵は肩をすくめて言った。 「……では、少し昔の話をしましょうか」 盛大に予想が外れた。それと同時に背中に嫌な汗が浮かぶ。 「五年ほど前の事です。私はペットを飼っていました。それはそれは大事にしていましたよ。 最初は反抗ばかりしていましたがちゃんと躾をするとそれも収まりました。 毎日決まった時間に三食与え、トイレの世話も、お風呂にも入れてあげて、 その後は太らないようにウンドウもしてあげました」 何かを思い出すように妖艶に笑みを浮かべる葵に思わず生唾を飲み込む。 だがその顔はすぐに落胆に変わった。 「その生活が1ヶ月もした頃でしょうか、私からペットを奪おうとする人が現れました。 最初からこの子は私のものなのに何度も『返せ』って言うんですよ? 最初は軽くあしらっていたのですがだんだんストレスも溜まってきまして、 お肌に良くないですし、いい加減騒々しいのでその人を処理しようと出掛けました。 ですが、それが間違いだったのかもしれません。 上手く処理が出来たので上機嫌で家に帰るとペットがいないんです。 私はその晩、泣きに泣きました。後日落ち着きを取り戻した私は、 何があったのか仕えているメイドに聞くと、 友達とか言う人が押し入ってペットと一緒に逃げたそうです」 葵がそこで言葉を切った。俺の隣に大塚が立っている。 「カプチーノとブラックコーヒー、お持ちしました」 小皿の上にティーカップとスプーンを乗せ机に置く。 「では、ごゆっくり」 伏し目がちにそう言い大塚が何かを呟いて店の奥に引っ込んだ。 「とりあえず飲みましょうか。冷めるのも嫌ですし」 あまり飲む気分ではなかったが葵の大きな瞳が俺を捉えて「飲め」と言っている。 仕方なくちびりちびり口の中に運ぶ。 「では、先ほどの続きを」 前置きし聞きたくも無い昔話が再び始まった。 「それから私はその友達とどこかへ消えたペットを探しました。 まぁ、紆余曲折はありましたが今年になってようやく見つけ出しました。 あなたというペットを……何かおかしな事でも?」 「いや、く、はは、なんでも、ない」 笑いが止まらない。困った時に笑うという日本人らしさが遺憾なく発揮されている。 114 :雌豚のにおい@774人目:2012/03/19(月) 03 15 00 ID STlZt21Q このままではいけないと脳が判決を下した。 太ももをつねり気を引き締めて今度はこちらから切り出す。 「それで、どうする気だ?その細い腕で俺を連れ戻すとでも?」 緊張のせいか口の中が異様に乾く。 半分も減っていないコーヒーを一気に飲み干すと、葵が笑みを浮かべた。 何かとてつもなく嫌な予感がする。すぐにこの場を離れろと頭の中で警鐘が打ち鳴らされている。 「ふふふ、流石にそんな事は出来ませんよ。あなたの幼馴染のあの人なら出来たかもしれませんがね。 あの可愛い子なら」 「……俺はもう行くぞ。これから仕事がある」 「もう少しだけいても良いでしょう? それにあなたって今は無職じゃないですか。 仕送りで生活しているんでしょう?」 「なっ……!」 下手に出歩けば見つかる可脳性が高くなってしまう。 その為俺は事情を話し止む無く親からの仕送りで生活していた。 誰のせいだと怒鳴りたくなったがそこをぐっと飲み込む。怒りで時間をつぶしたくは無い。 「もういい、俺はいく、ぞ」 席を立ち、少し歩いた所で酷い眩暈が襲った。 次第に意識が朦朧としてくる。 「くそ、なん、だ……これ」 あぁ、そうか。簡単な事だ。薬を盛られていたんだ。 ではいつ?葵は何もしていない。とすると大塚が盛った事になる。 「何故? と思っているでしょう?これも簡単な事、脅迫よ。 あなたを逃がしたのが大塚君って分かったのはすぐの事。でも探すのに手間取ってね。 去年ようやく見つけて、『あなたの居場所を言わなきゃ殺す』 って子供みたいに脅したら血相を変えて答えたわ。 あの時の顔ったら、ふふふ、あははっあはははははははははははははは」 警察に言おうか、と大塚は一瞬考えただろう。だが久坂の家は多方面と繋がっている。 言うに言えないだろうし、警察もきっと動かない。 大塚本人はここにいない。二人だけの室内に葵の高らかな笑い声が響く。 その声に力を抜き取られているのではと錯覚してしまうくらい全身に力が入らない。 駄目だ、立てない最悪這ってでもここを出なければ。 「ふっふふ、どお?お友達に裏切られて、悔しい?悲しい? 私は嬉しいわ! あなたのそんな顔を見るのも監禁し始めた頃以来だもの、 体の芯から嗜虐心を煽られるこの感じ、くひひひひ」 いつの間にか葵が俺を正面から見下していた。 「今夜はたっぷりお仕置きしてあげる。逃げる気も起こらないぐらいにね。ふ、ひひ、ひひひ」 残る力で葵を見上げると口を三日月の様に歪ませていた。 まぶたにも力が入らなくなる。 目を閉じればすぐにでも意識が離れるだろう、ああ、もうどうでもいい。 どうせ俺はもう逃げ出せれない。それならもう身を任せてしまえばいい。 あの生活もいいじゃないか。 逆らえば鞭が飛び、決まった時間に高級料理が並び、葵が俺の糞尿を飲み下し、 広い浴場に癒され、その後は夜が明けるまで葵の体を貪る。 それでいい、自由は無くとも不自由はない。 だから、だからもう寝てしまおう。 寝てしまおう。
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500 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 24 00 ID 09Az+jvq 1 「ふうぅっ。結局、セックスしたいだけか?」 サキちゃんは何故か気の抜けた声で、天井をぼんやりと眺めて溜め息を吐いた。 急速に熱が冷めて行き、 「どうしてっ? ボクの彼女さんは、エッチさせてくれないの?」 「なっ!? んだよ、ちっくしょう……いつの間にオレが、ゆーとの彼女になってんだよっ!?」 急速に熱は振り返す。 恥ずかしそうにボクを睨んで、湯気が見えそうなぐらい真っ赤っか。 さっきまで、もっと凄いセリフ言ってたのにね。 「じゃ、今はオナホさんで我慢するよ」 ボクだって身体が熱くて、挿れたくて、堪らないから。上着も、下着も、靴下だって脱ぎ捨てる。 そして今度は、引き出しからコンドームを取って持つ。半年前に買って、使うのは今日が一枚目。初めての開封作業。 「えっ、ちょっとサキちゃん!?」 だったけど、袋を破こうとしたら、目の前にヌッとサキちゃんの足が伸びて来て、タイツ越しの指先がコンドームを挟んでさらってった。 「ゆーとは、オナホとする時、ゴムなんか付けるのか?」 なに言ってるの? 本気でオナホ代わりだって思ってたらゴムなんて付けないよ!! こんな歳で『万が一』が起こっちゃ駄目な相手だから、ゴムをきちんと付けるんだ。 「返してサキちゃん。もし、ボクがエイズとかだったらどうするの?」 それなら真剣に、チンチンは萎えて小さくなっちゃうけど、好きな初恋の人を一番に考えたい。 思って、サキちゃんの指先からコンドームを取り上げようとしたけど、頑なに挟まれたゴムは伸びるだけで動かなかった。 「オレとゆーとの間に、何も入れるな」 寂し気な瞳が、頬と同じに赤いだけ。 悲しそうに、悲しそうに、 「それにな、別に死んじまう病気になったっていいんだよ。オメェも一緒なんだろ? それなら置いてくんじゃねぇ。どーせ、オレ一人じゃ生きてけねーし、ゆーとが死んだらオレも……おおっ!?」 この世と自分を卑下してる。 そんな事を、これ以上サキちゃんに言わせたくなくて、とても可愛くて。 足の間で、ムチムチの太腿を抱える様に腰位置まで持ち上げた。 「もおぉっ!! 知らないんだからっ!!!」 再び最硬度に復活したチンチンの先を、唾液とローションでトロトロな、幼い肉スジに押し付ける。 ボク、惚れられてるんだよね? そう自惚れても良いよね? 素直じゃないサキちゃんの、一生懸命な告白だよね? そしたらボクも応えないと。後から、冗談でした……じゃ、絶対に済まさない!! サキちゃんをボクのモノにするんだ。泣いたって叫んだって関係ない、膣内射精だからねっ!! 遠慮無く種付けしちゃうよ!? 着床させちゃうんだよぉっ!! 501 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 25 48 ID 09Az+jvq 2 赤い部屋、赤い髪、赤い瞳、赤い唇。そこに漂う柚と女の子の香り。 思考回路は甘く痺れて、勝手に射精する準備を調える。 引き裂いた黒タイツの穴、クリトリスだけが顔を出してるソコに、先っちょを当ててるだけでカウパーがドクドク溢れてゆく。 まるで射精してるみたいに吐き出し、それを上回るペースで精子が生成されてる。 きっと今イッたら、想像できないくらい大量の精液が出るだろう。 中出しなんてしたら、一発で妊娠させる自信が有るよ。 「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ!!」 息が荒れる。荒くなる。肩で呼吸して、この体制で固まっちゃう。 引き返すならここが最後。すこしでも進んだら、間違いなく戻れない。 「んっ、どうしたんだよ?」 だから、最後の最後、最後の決断を、サキちゃんに決めて貰う事にした。 全身ぐっちょりなサキちゃんの、ずっと片思いしてた顔を見詰める。 どーするのって、止めるならここだよって。 でも、たぶん、きっと。サキちゃんもずっと前から、 「ほらっ、こうすれば挿れ易いか? はやく……ふふっ、繋がらせておくれ」 ボクに片思いしてたんだ。 くちぃっ…… サキちゃんは両手の指を幼いスジの横に添えると、まるで貝が口を開けるように、盛り上がった部分を左右へと拡げた。 透明な糸が幾つも左右の唇に橋を架け、ぷっくりと膨らんだオシッコの穴まで覗かせる。 その下には、お腹を空かせた小穴が一つ。 ヨダレを垂らして、中のヒダヒダまで見せてチンチンを食べさせてってモゴモゴしてる。 「挿れるからねサキちゃん? サキちゃんと、ハジメテ交換しちゃうからねっ!!」 「ああっ、やさしく、しろよな?」 すき、すき、すきっ。 「ふっ!!」 腰を突き出し、にゅぷりと先端を肉穴にネジ挿れた。 一番太いカリ首を難無く咥え、中に引きずり込もうと懸命に膣壁が締め付ける。 小さいくて幼いヌルヌルのココは、やっぱりキツくて狭かった。 「ほらっ、動けよゆーと。オナホ相手に気を使うな」 そうじゃない。 これから、こんなキツい肉の中を掻き分けて行くのかと思うと、想像して身震いしてるだけ。 今だって気持ち良いのに、チンチン全部を包まれたらどれだけ気持ちいいんだろうって、妄想が止まらないだけだ。 「ゆーと? なんだよ、膜がねぇのが気になんのか? ちっ、オレだってな、ゆーととこんなに早くエッチできるんだったら……オナニーなんかで破るんじゃな、かひゅっ!?」 ぢゅぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!!! それを誤解されたく無いから、心配させたくないから、根元まで一気に押し沈めた。 無数の膣ヒダはピッタリとフィットして絡み付き、肉の歯で咀嚼するような動きで、グネグネと余す所無く刺激する。 「うわぁぁぁぁぁっ!! サキちゃぁぁぁぁぁっ!!!」 鈴口からカリ首、裏スジに至るまで全部、全部。サキちゃんの膣内は、とっても気持ちいい。 502 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 26 23 ID 09Az+jvq 3 さっき出したばかりなのに、もうイキそうになってる。 「ふあぁぁぁぁぁん!! おっき、ふといいぃぃぃぃぃっ!! あ、あっ、あぐっ……このバカゆーとっ!! やさひくって、ゆったろ? ビックリすゆんだきゃらなバカっ!!」 サキちゃんは舌足らずな子供声で、身体を細かく震わせるだけ。 それでもアソコのお肉は隙間無くチンチンに吸い付き、腰を引こうとするボクを逃がしてくれない。 「サキちゃん、一回外で出すから……うあっ、ふぐっ、ちから抜いてぇっ!!」 なんだかんだ言ったって、考えたって、覚悟したつもりでいたって、やっぱり妊娠させちゃうのはマズイ気がする。 どーせ一回ぐらいじゃ萎えないんだから、外で射精して、ゴムを付けて、その後で続きをしよう。 とにかく、このままは駄目。動かなくてもイッちゃう。サキちゃんを妊娠させちゃう。サキちゃんをボクの……だから、だから。深呼吸して、少しずつ、ゆっくりでいいから、チンチンを外に出す。 だけど、そんな考えは見透かされてて。背中に回された足は、ボクの身体をガッチリとホールドした。 「ゆーと、オレにムカついてたろ? 生意気だったろ? だからよ……オレの子宮なんて、調教しちまえば良いじゃないか? 毎日、まいにち、ちつないシャセイしてさ? ゆーとの子供以外、産めなくしちまえばいい。ザーメン漬けにしちまえばいいんだ!!」 そして理性なんて吹っ飛ばす言葉で、ボクの心を蕩けさせる。 「もおおぉっ!! 本当に知らないんだからぁっ!!」 チンチンの中を、精液がマグマのように噴き上がる感覚。間に合わないって悟らせられる。だったらもう……本能の赴くままに。 ずりゅりゅっ…… 「あんっ!! ゆぅとぉっ」 僅かに引いてた腰を打ち込み直し、一番奥まで挿れ直す。 我慢の限界はすぐそこ。チンチンは意思とは無関係に脈打ち、表面を撫で回す膣壁の動きまで敏感に感じ取る。 ああっ、ああっ、目の前が真っ白になってく。見えるのは、全身を火照らせて、中出しを求め、待ち焦がれる幼馴染み。 ボクは、そんな幼馴染みに、 「ううっ、ううぅっ、サキちゃ……スキいぃぃぃぃぃっ!!!」 ちつ、ない、しゃ、せい。 びゅるびゅぅぅぅっ!! びゅぎゅびゅぎゅっ!! ドクンドクンドクン…… 「ふぎいぃっ!? ふんんっ……あ、ぅあぁっ、すげぇ量だなぁっ。へへっ、そんなにオレの中が気持ちよかったのかぁっ?」 キツく狭い膣内は、ボクのチンチンでいっぱいいっぱい。 当然どれだけ長い射精をしたって中には溜まらず、ボトボトとピンク色の唇から逆流して垂れ落ちる。 503 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 28 42 ID 09Az+jvq 4 あはっ、はっ、はっ……もう、どうでもいい、かなっ? 視界はクリアに戻って、頭もスッキリしたけど、身体は満足してない。チンチンは勃起したまま。 まだまだ、サキちゃんに、射精したい。 「これで動きやすくなったから、さ……思いっきり、出し入れしちゃうね? ふっ!」 ボクの精液と、サキちゃんの愛液と、ハードローションが混じり合わさったネバネバのミックスジュース。 エッチな蜜で満たされた肉穴の中は、キツさが減って滑りが増して、細かいヒダヒダが絡み付いて、とっても気持ちいい。 ずにゅにゅっ…… 「えっ? えっ!? ふぎぃっ!!?」 力任せに入り口手前まで引き抜き、 ぢゅぱんっ!! 「あんっ!! つぁあぁっ……腹んナカが、ごりごり、ゴリゴリ、引っ掻かれてるっ……んはあぁっ!!」 一息で最奥に届くまで打ち付ける。 「サキちゃん。ズボズボしちゃっても、良いよね?」 おヘソの裏側にチンチンの形が浮き出て、お腹が僅かに膨らんで歪む。 サキちゃんはそれを見たくないのか、顔に両手を置いて目を隠していた。指の間からバッチリ見てるけど。 ただ、それでも、 「いいぜゆーと。イカせろよ……」 恥ずかしそうにコクリと頷いてくれた。 「ねぇ、サキちゃん?」 好きだって気持ちが込み上げる。ココロもカラダもいっぱいになる。 サキちゃんは、みんなから嫌われてて、怖がられてて、親からも見捨てられてて。 ボクだけに依存して、ボクをみんなから隔離して、ボク以外を切り捨てた。 それなのにボクをパシリにして、ボクは回りから哀れみの目で見られてる。 「ボクに、好きだって言ってよ」 だからどうしたのっ!! 今のボクは、スタイル抜群でっ、とっても綺麗な女とっ、セックスしてるんだ!! 中出ししたんだぞっ!! ボクは、ボクだけが知ってるんだ。周りの奴がサキちゃんを見る目は、恐怖だけじゃない。 女は羨望の眼差しで、男は野獣の眼差しで。擦れ違う度にみんな振り返る。 子供だって、大人だって、先生だって!! 男女関係無くみんな、みんなっ!! 羨ましいんでしょ? この身体が、顔がっ!! だけどもう誰にも渡さない!! 十年以上も前から好きだったんだ、誰が渡すものかっ!! 擦り切れるまでオカズにしてオナっててよ。 「んっ? いきなりどうしたんだよ? ははーん……もしかして、オレに本気で惚れたな?」 うん。冗談めかしてるけどビンゴだよ。素直じゃないサキちゃんを、本気で好きになった。 だからこそ、独占欲で頭が支配されてる。好きだって言って貰えなくて不安なんだ。身体だけの関係なんて、イヤ、だよぉっ…… 504 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 29 14 ID 09Az+jvq 5 「サキちゃ、好きっ! すきいぃぃぃぃぃっ!!」 ぬっぢゅ! ぬっぢゅ! ずっぢゅ! ずっぢゅ! ずっぢゅ!! 言葉だけでも、身体だけでも、ボクの思いは伝わらない。 だから、好きだって声に出して、一突きごとに好きだよ、本気だよって教え込む。 「ひぐぅっ!? あ、あ、あっ、あっ、あんっ!! ふあぁっ、ばきゃぁっ……ゆぅとの、ふんんっ!? おっきいんだからっ、急にされたら、ビックリすりゅって、ゆったろっ!?」 サキちゃんはもう、身体を痙攣させて口から舌を垂らすだけ。 でも、下のクチは違う。 抜く時は、行かないでと情熱的に吸い付いて、一々カリ首に引っ掛かり、 挿れる時は、柔らかく擦れ合って、根元まで全体をきゅきゅぅっと締め上げる。 ボクだけが味わえる、ボクだけの特権。ボクだけのチンコ容れ。 「すきっ、すきっ、すきっ、すきっ、すきっ……」 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぶ、ぢゅぱん! ぢゅぱん! ぢゅぱん!! 汗はダラダラ、ボクもサキちゃんもグッチョグチョ。 膣内の上側を、下側を、左右を、えぐるように何度も突いてハメ倒す。 「ぁああぁぁっ♪♪ イッてる! イッてりゃからっ!! いっかい、はあんっ……とめろぉっ。イッてる、さいちゅうにっ、んぎいぃっ!? イカすなバカぁっ!!」 サキちゃんは身体を弓なりに反らせながら、小刻みに震えて奥へ逃げようとするけど、ボクが突き挿れる度に力が抜けて無抵抗になる。 スキーン線だっけ? そこグリグリされると気持ちいいんでしょ? ボク頑張るからねっ。沢山イッて貰う為に、頑張るからっ!! 「大好き、大好き、大好き、ダイスキぃっ!!」 サキちゃんの中は熱を増し、ヌルみを増し、ボクのチンチンは溶けちゃいそう。 凄く気持ちが良くて。このまま溶けて無くなっても、別にいいかなって思わせる。 オナホは壊されたけど、他なんて知らないけど、きっとサキちゃんが一番気持ちいいんだ。 そう考えたら、オナホなんて要らない。他の彼女なんて要らない。たった一人、ずっと好きだった幼馴染みに、サキちゃんに、好きだって言って欲しい。 嘘だって良いさ。好きだって言ってくれれば、サキちゃんを守って、サキちゃんの為に死んで上げる。 ボクが勘違いしたまま死んで、その後で馬鹿な男ってケナされたって構わないよ。それだって、最後の瞬間までは幸せな筈だから。 だからサキちゃん、お願いだからサキちゃん、少し……ほんの少しだけ、素直になって? 嘘でも良いから好きだと言っ……ううん、違うね。ボクが、サキちゃんに、好きだって言わせてみせるっ!! 505 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 31 56 ID 09Az+jvq 6 スピードを変え、角度を変えて、サキちゃんの中を掻き回す。 それは赤い部屋、柚の香りが立ち込める部屋に、粘着質な水音として響き渡る。 ぢゅぱん! ぢゅぱん! ぢゅぱん! ぢゅぱん! ぢゅぱん!! 「サキちゃ、早くてゴメンね? ボク、もっ、イキそうだよぉっ」 呆気なかった。どんなに気持ち良くなって貰おうとしても、さっきまで童貞だったボクじゃ、三回目の射精でも全くもたない。 いっぱい頑張ってみたけど、我慢したけど、精液はチンチンの管を押し拡げて登って来てる。 勇人のバーカ! これじゃ、サキちゃんに好きだって言って貰えないよっ。 でもサキちゃんは、ボクを虐める時のような笑顔になってた。 動きに合わせて腰を前後させ、胸を揺らし、弾ませて、限界を迎えるボクに気持ち良く中出しを促してる。 「おっ、泣いてんのか鈍感チェリーボーイ? ったく、やっとイクのかよ? オレなんて、んんっ、十回から先は数えてねーぜ♪」 泣いてるの、ボクが? あっ、だからサキちゃんが霞んで見えるんだ。 でもそっか……たくさんイッてくれてたんだね? 嬉しいな。 「ボク、サキちゃんのこと、好きだからっ。オナホだなんて思ってないからっ!!」 イク直前、チンチンの先を奥の口に押し付けて、ガッチリとサキちゃんの身体を引き寄せる。 今度は逆流しないように出口を塞ぎ、唇の形だけで好きって囁いた。 「ふふっ、熱い告白だな。それだけで妊娠しそっ♪♪ ほらっ、ゆーとの大好きなサキちゃんが、ぜーんぶ受け止めてやるから……しっかり、孕ませろよなっ」 サキちゃんは幸せそうに微笑むだけ。ずっと昔、まだ小学生だった頃の笑顔に戻ってた。 明日からこの笑顔が手に入るなら、そこに愛が有るなら、ずっとパシリでもいいや。 あっ、イキ、そっ。 「うわあぁぁぁぁぁっ!! サキちゃぁぁぁぁぁんっ!!!」 爆発する。搾り取られる。チンチンが一瞬で膨らんで、作られた精液が鈴口に押し寄せる。 気持ちよくマッサージしてイカせてくれる、サキちゃんの膣内へ…… 「ひあっ!? またイクっ、イクぅっ!! っぁああぁぁああぁぁぁぁっ♪♪♪」 びゅぐびゅぅぅっ!! びゅくびゅく、びゅるんびゅるんびゅるびゅる!! ドクンドクンドクンドクン…… 空になるまで中出しした。何秒も、何十秒も、何年分の想いと一緒に膣内射精。 サキちゃんのお腹は大きくなって、ボクので一杯に満たされたって訴えてる。 「ふあぁっ♪♪ だしすぎだバカっ! そんなに、たくさん、子宮にっ、はいるわけねーだろぉっ」 「んっ!? うん……ゴメンね。でも、サキちゃん好きだから」 未だに勃起したままのチンチンを、ズルズルと肉穴から引きずり出す。 そこからは、とめどなく白濁な精液が溢れて、シワの集まったお尻の穴も、ベッドのシーツも、ボクの吐き出したモノで汚れてしまった。 506 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 32 31 ID 09Az+jvq 7 ボク、三回も射精したんだね? でもねサキちゃん、ボクね、あのねっ。 「ボク、まだっ、出し足りないよぉっ……」 ベッドに仰向けで横たわるサキちゃんの下に手を差し入れ、クルンと俯せの状態にひっくり返す。 「はっ? オメェ、なにいっ……きゃっ!?」 そしてお尻の穴の周りを、指先を使って円を書くように、シワを伸ばすように、優しく弄りほぐして行く。 最初に前を舐めた時に感じたけど、サキちゃんはココも綺麗にしてたんだ。 ピンク色のコリコリした穴のヘリだって、ローションと絡まって熱く蕩けてる。 また自惚れるなら、きっとサキちゃんは、ボクに求められても良いように、『こっち』の準備もしてた。 「やっぱりボク、サキちゃんのハジメテ欲しいから……お尻の処女、ボクにちょーだい?」 ローションと精液と愛液を、右手の中指に塗りたくってシワの間に押し付ける。 「ひっ!? だっ、ダメだダメだダメだっ!! ダメに決まってんだろバカ!! ここは挿れて良い所じゃねーの!!」 でも、すぐにサキちゃんは両手を重ねて、お尻の穴を可愛く隠した。 そんなふうに拒絶されたら、余計に欲しくなるよ。どれぐらい気持ちいいんだろって妄想で、チンチンが大きくなるだけだし。 だからその為なら…… 「サキ、ちゃん? もしサキちゃんのハジメテをくれるなら、これから先……サキちゃんをずっと守ってあげる」 どんな事だって言えるよ。本音を、本心を、本気の声と誓いで。 思った想いは全て言葉に。 「ふぇっ?」 サキちゃんは小さく驚いて、視線だけを後ろに、ボクへと向ける。 鍵は開きかけて、するのは最後の追い打ち。 「もしサキちゃんが車に轢かれそうになったら、ボクが飛び出してあげる。ボクがサキちゃんの代わりに死んであげるよ。それでも……ダメ?」 真っ直ぐにサキちゃんの瞳を見返し、真っ赤に震えるサキちゃんの返答を待つ。 肩で息をしながら、呼吸を一つ、二つ、三つと数えて、重ねてた両手が位置をズラした。 「ぐっ、ちっくしょぉっ……そんな甘いこと言われてよぉっ、オチない女なんて、いないだろバカっ!!」 ぐちいぃっ…… 両手は尻肉を引き伸ばしながら左右に動き、お尻の穴を拡げるようにしてボクに見せ付ける。 綺麗なピンク色をした、糸を引いてる腸の中を。 「好き、サキちゃんダイスキっ……んっ、ちから、抜いててね?」 既に流れ込んでいたローションが、ぐちゅぐちゅと音を鳴らして中を馴らし終え、湯気を立てて温度を教えてくれる。 ボクはサキちゃんのお尻に手を着いて、ヌルヌルでガチガチのチンチンを押し付けるだけ。 「ふぅっ!? ゆっくり、ゆっくりだぞ? ゆーとのおっきいんだから、いきなりしたら壊れちまうんだからなっ!!」 そこは力を入れなくとも柔らかく拡がって、カリ首までをにゅぷりと飲み込む。 507 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 33 22 ID 09Az+jvq 8 まだ先っぽしか挿れてないのに、痛いぐらいの締め付けが伝わって来る。 サキちゃんに手助けされても、キツキツでいっぱいいっぱい。 そんな腸壁の中へ、これからボクはチンチンを挿れるんだ。 「うんっ、ゆっくり、挿れるよ?」 ゆっくり、ゆっくり。ゆっくりと腰を押し進める。 「ふんんっ!? あ、あ、あっ、くるしっ……ゆっくり、ゆっくりだぞ? ゆっくり、だからなっ!!」 前よりもキツくて狭いお尻の穴。幾つもの重なった輪っかの中を、拡げながら突き挿れて行く感覚。 しかもそれぞれが全く別の動きで蠢き、凄い気持ち良さでチンチンを締め付ける。 まだ半分ぐらいしか挿れてないのに、ゆっくり挿れてたのに、それでもイキそうなのに。 全部挿れたら? 一気に挿れたら? ボク、どうなっちゃうの? ためし、たいっ、よ…… 「サキちゃぁぁぁぁぁっッ!!!」 柔らかくて弾力の有るお尻の肉を掴んで、 ぢゅぶぶぅぅぅっ♪♪ 奥の奥までチンコを突っ込んだ。 「ゆっく、りゅっ!!? ふっ、ぐっ……ゆっくいって、ゆったろデカチン!!!」 サキちゃんは頭を上げて、ビクンと大きく身体をのけ反らせる。 そして歯を食いしばり、口横からヨダレを垂らして、耳まで紅潮させてボクを睨んだ。 アソコからは膣内射精した精液が押し出され、ばちゃばちゃと泡立って床へと流れ落ちる。 ゴメンねサキちゃん。でも、でもっ、凄く気持ちいいんだ!! 「サキちゃん……おなか、だいじょうぶ?」 お腹の裏側を、お尻の中から優しくえぐって上げる。 その度に中出しした精液は零れ、苦しそうに、切なそうに、サキちゃんの表情が歪む。 「ぎっ、ぎぃっ……おまえ、なぁっ。内臓の位置、ズレたらどーすんだよ? 子宮ツブしたら、絶対に許さねーからなっ!!」 怒ってるの? 子宮って、赤ちゃん作る所だよね? そっかぁっ、ボク、とっても嬉しい!! 「あっ、やっぱりサキちゃんみたいな不良さんでも、赤ちゃん産みたいんだ?」 「わるいっ……かよ?」 ボクもサキちゃんと、赤ちゃん作りたいよ。 そしたら、ケジメ、つけないとねっ。 いじけて、プイってそっぽを向くサキちゃんが可愛すぎるから……ボクが、守ってあげなくちゃ!! 深呼吸しながら、慎重に言葉をセレクト。好きだって本気を、全部サキちゃんに伝える。 「安心、して。もしサキちゃんを壊しちゃったら、ボクが責任取るから。ボクが……サキちゃんをお嫁さんにするから」 ずっと前から貴女を、 「はへっ?」 好きでした。 508 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 33 52 ID 09Az+jvq 9 ボクはサキちゃんが好き。そんな当たり前の事を、改めて考えたら、今してる行為が怖くなった。 こんな好きにさせられたのに、もし今更嫌われたら、ほんとに立ち直れなくなる。 だからさっきから、少しずつ抜こうとしてるのに、 「でも、無理はしたくないからさ。抜いちゃうね? あっ、えっと、あの……お尻に力を入れないで欲しいな」 まるで射精を催促するかのよう。きゅうぅっと締め付けて放してくれない。 「ははっ、気にしないでコワセ。今までムカついてた分を、ここで解消しちまえっ!! だから……なっ?」 何言ってるのサキちゃん!? ボク、サキちゃんを壊したくなんかな…… 「オレを、ゆーとの、お嫁さんにしろよ」 「もっ、しらないっ!! いちいち、イチイチ、可愛過ぎるんだよもぉっ!!」 ずりゅりゅっ!! 引き抜こうとしていたチンチンを、また根元まで刺し挿れた。 今度は手加減なんてしない。自分がイク事だけを考えて、思いっきり腰を前後する。 ずぱんっ! ずぱんっ! ずぱんっ! ずぱんっ! ずぱんっ!! 「うひゅっ!? ふあっ、あ、ああぁぁああぁぁぁぁぁっ♪♪」 サキちゃんは、布団に顔を埋めて喘ぐだけ。 ボクは、ヒダヒダお肉をこそぎ落とす勢いで突き捲くる。 「わかってるのサキちゃん!? 毎日お味噌汁つくって、毎日ちゅーして、毎日えっちするんだよっ、それでもいいのっ!?」 四度目の射精だって、あっという間。一日でこれだけ射精したのは初めてだよ。 きっと、ボクのチンコはバカになった。これだけ気持ちいいのを教えられたら、サキちゃんでしか射精できなくなっちゃう。 「イイっ、つってんだろがっ!! ゆーとの赤ちゃん、いっぱい産むんだからなっ!! うぅっ、はぁんっ……ゆぅとっ、ゆぅとぉっ!!」 すきっ、すきっ、すきっ。 ボクも責任取るからっ、サキちゃんも責任取って!! ボクのチンチン、気持ち良くしてっ!! 「サキちゃん!! サキちゃん!! サキちゃぁぁぁんっ!! 結婚してっッ!!!」 びゅるびゅるびゅるびゅるぅぅぅっ!! びゅくんびゅくん! びゅくびゅく、どくんどくんどくん…… お尻の奥、唇の形したコリコリに押し当てて、たっくさんの精液を注ぎ込んだ。 今度こそ空になるまで、最後の一滴まで。 「ふああぁぁぁぁぁぁっ!!? ゃあぁっ、あぁっ、えひゃっ♪♪ おひりのナカで……ゆーとのっ、ビュクビュクゆってりゅぞ♪♪ しあわせにっ……しろよなっ?」 こうして、ヤンキーサキちゃんはデレデレになったのでした。 ヤンキーが、デレデレ。 ヤンキー デレデレ ヤン デレ 509 :『コウヘイッ、タイマンじゃあ!!』後編 ◆uC4PiS7dQ6 [sage] :2009/03/15(日) 21 36 26 ID 09Az+jvq 10 あの日から一ヶ月が経過しました。 ボクとサキちゃんは、アパートで二人暮らしし。お金は、殆どボクとサキちゃんの両親が出してくれてます。 早い話しが、サキちゃんを押し付けられたのです。あの日以来、ボクの側を離れようとしないサキちゃん。 ずっとボクの部屋に入り浸ってて、それならと追い出された。 ちなみに、生理が来たみたいなんで、妊娠はしてないそうです。なんだかホッとしたよ。サキちゃんは残念がってたけど…… それと言葉使いはまだ直ってません。料理は上手だけどね。 ボクとサキちゃんは、2LDKの部屋に住んで暮らしてる。 夕方はアルバイトして、夜はエッチして、朝は学校に『行こうとする』。サキちゃんにも友達を作って欲しくて、連れて行こうとする。 「サキちゃん、今日こそ学校に連れてくからねっ!!」 けど…… 「あんっ? オレの仕事は炊事、洗濯、掃除、だぜっ? それと喧嘩の助っ人だな。後は……ふふっ、ゆーとがいつ発情しても良いように、綺麗で居る事だ。オレ、間違ってるか?」 いつだって誤魔化されるんだ。何度だって惚れ直す、甘く痺れる台詞と笑顔で。 「気にするなゆーと。友達なんて要らない、仲間なんて要らない、中出ししてイカせてくれる、お前だけでいいんだ」 ボクを、 「あっ、それとな……昨日のバイト中、ゆーとに色目使ってた店員ブッ飛ばしといたから。顔がボコボコになっててもビックリするんじゃねーぞ?」 縛り付ける。 「友達も仲間も居ないけどよ、舎弟は……たくさん居るんだぜ。だからなっ? 誰かは、いつも、オメェを見てるぞ、ゆーと」 スキだよサキちゃん。 ボクが、 「オレが、守ってやるからなっ」 守ってあげるからね。 お わ り
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185 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 01 56 55 ID ReNKNHut 「ゴールドもおっぱい大きいほうが好きです?」 「突然何をっ!?」 槐市に向かう道中。 少し休憩していると、ポポが突然そんな爆弾発言をした。 「だってゴールド……前のジムで、相手の胸ばかり……」 「そ、そそそそそそんなことはないよ! 何を言うんだポポ!」 慌てる僕の横で、なぜかやどりさんが自慢げに胸を張っていた。 いや、着ぐるみのせいで体のラインなんてさっぱり分かりません。 なんて言ったらいいか分からず、僕は苦笑いを浮かべるばかりだ。 てなわけで、僕達は槐市にやってきた。 香草さんが帰ってくるまで古賀根市に留まりたかったけど、槐市でロケット団の目撃証言があったのだ。 だから僕は古賀根市のポケモンセンターで、受付のお姉さんに頼んで香草さんへの言伝を残し、槐市を目指した。 香草さんがいないことに対する道中の不安は無くはなかったんだけど、その不安はすぐに掻き消えた。 ポポとやどりさんの相性の良さは香草さんとのそれをはるかに上回っていたのだ。 ポポが空から敵の座標を捕捉すると、やどりさんはそこに念力や金縛りを使い、相手に気取られることなく、迅速に敵を行動不能にした。 まさに無敵。ポポの視界が届く範囲、やどりさんの念動力が届く範囲は完全に彼女達の領域だった。 これなら、シルバー戦だって、ランを傷つけず、シルバーを身動きが取れなくすることだって簡単だ。 シルバー、次に会うときがお前の最期だ。 僕は心の中でそう呟いた。 それと、道中でポポが進化した。 空を飛んでいたら突然体が光だし、フラフラと落ちてきて……と最初の進化とほぼ同じ光景だった。 進化したと言っても、髪が伸びたことと翼が大きくなったことくらいしか大きな違いは無いように思えた。 そのことをポポに言ったら、 「それならゴールド、試してみるです?」 といたずらっぽく笑いながら言われたので、試しにどれだけ高く飛べるか見せてもらった。 速度、高度共にかなりのもので、やどりさんも、あそこまでは念力が届かないと感心したほどだ。 また、力も強くなったようで、道具を使えば僕達を空を飛んで運ぶことができそうだ。 こうなることを見越して、古賀根デバートで固定ベルトを買っておいたのは正解だったな。 普段は使わないけど、飛んで移動する必要があるときや速く移動したい時に役に立つだろう。 問題はポポと大分密着する形になってしまうということだけど。 ともかく、これでポポは最終進化。実に頼もしい。 186 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 01 57 40 ID ReNKNHut そして槐市。 槐市は古くはこの国の首都でもあった場所であり、現在も古都として風光明媚な景観を守っている。 一方、かつては数多の謀略が渦巻き、幾度となく戦乱の舞台にもなったこともあり、魑魅魍魎が渦巻く魔都として語られることもある地だ。 尤も、シルフカンパニーがシルフスコープを開発し、『ゴースト』という種類のポケモンが研究、一般化されたことによって幽霊の正体が暴かれ、魔都としての色は薄れつつある。 そうは言ってもこれだけの古い寺社仏閣に囲まれると、なんとなく厳かな気持ちにさせられる。 ポケモンセンターに宿を取った僕達は、早々に警察署へ行き、ロケット団の情報を聞くことにした。 僕はトレーナーだから、今後の旅の進路に危険がないようにロケット団の動向を聞きたいといえば、目撃情報くらいならすんなり教えてくれると踏んだのだ。 この予想は果たして正解だった。 行く先の安全のためとあれば、教えないわけにも行かないらしい。 ロケット団という理不尽な理由で旅が終わってしまえば、ロケット団による犯罪の防止率が思わしくない自分達の体面が立たないというのもあるのだろう。 巡査さんのくれぐれも目撃のあった場所には近付かないように、決して変な好奇心なんかを起こすんじゃないという言葉に、僕はもっともらしい顔をして応対した。 どうも目撃されたのは槐市の東の外れ、槐市というより隣の丁子町に近いところらしい。 本来の順路では丁子町より先に浅葱市に行くべきだから、丁子町に入る前に捕捉したい。 仮に丁子町に入られてしまった場合、順路をはずれるだけでなく、確か丁子町の手前にはチェックポイントの役割を果たしている通行所があったから、ここを何とか潜り抜ける方法も考えなきゃならなくなる。 とにかく色々と面倒になる。 というわけで、とりあえず丁子町のほうに向かうことにした。 ポケモンジムは後回しでも問題ないだろう。 僕は数日振りにおいしい食事、暖かいお風呂と柔らかいベッドにありつけてご満悦だ。 道中は警戒のためだのなんだの理屈をつけられて息がかかる距離で三人一緒に寝ることになってしまったが、今日はきつく言ったので久々に一人でベッドを使える。 僕は先行きの不安に悩まされながらも、ベッドのお陰ですぐに眠りに着くことが出来た。 「おはよう……ってなんで二人ともボロボロなの?」 翌朝目を覚ました僕の目に飛び込んできたのは、妙に散らかった部屋と、着衣が乱れたポポときぐるみが解れ、中から綿が覗いているやどりさんだった。 二人とも長い髪がぼさぼさなのは寝起きのせいだけじゃない気がする。 「お、おはようです!」 慌てた様子でポポが答える。 一方のやどりさんは無言で目を閉じ、唇を突き出している。 「……何?」 「おはようの……ちゅー」 やどりさんがそう答えた瞬間、ポポの翼が強かにやどりさんの後頭部を打った。 「いきなり何言ってるです! まったく、油断も隙もないです」 険悪な様子で二人はにらみ合う。まったく、どうして二人共こう……まともじゃないんだ。 「はいはい、騒ぎを起こさないって約束しただろ? 丁子町は遠いんだから、早く出発の準備して」 二人を諌め、僕も自分の準備をする。 二人は途端におとなしくなり、いそいそと自分達のベッドに戻った。 やはり彼女達をこの計画に引き入れたのは正解だった。 以前のままじゃ、どの道事件を起こして警察のご厄介になるのは目に見えていた。 仕度を終え、一緒に朝食をとった僕達は(現在ポポの食事の世話はやどりさんがしている。念動力のお陰で食事をしながら並行してポポに食べさせることが出来る。ポポは激しく不服そうだけど、僕は見ない振りをした)、早速丁子町目指して出発した。 しばらくすると市街地を抜け、街道にでる。 点在する寺社を横目に、一心不乱に歩き続け、そして野宿。 翌日もまた歩き続け、昼頃にようやく通行所の辺りに着いた。 そこで僕は驚愕することになる。 「ゴールド、煙が見えるです」 初めに気づいたのはポポだった。 空を飛んで哨戒に当たってもらっていたんだけど、どうも行く手に煙が上がってるらしい。 僕にはさっぱり見えないんだけど、前例もあるし、多分ポポの言うことは事実なんだろう。 怪訝に思いながらも進んでいくと、再びポポが声を上げた。 「ゴールド、燃えてる、燃えてるです!」 「燃えてるってなにがさ?」 「通行所です!」 な、なんだって! 187 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 01 58 43 ID ReNKNHut 「ポポ、本当なのか!?」 「間違いないです!」 通行所が燃えてるなんてただ事じゃない。 特に、近くでロケット団の目撃情報があったばかりの今は。 「ポポ、僕を抱いてくれ! やどりさんも飛んで欲しい」 僕は鞄から飛行用のベルトを取り出しながら指示を出す。 自分で走るよりポポに掴んでもらって飛んだほうが遥かに速い。それに、やどりさんも走るより念動力で飛んでもらったほうが速い。 本当は無駄に体力を浪費するべきじゃないんだろうけど、一刻も早く通行所に駆けつけたかった。 「だ、抱いてなんて、ポポ恥ずかしいです」 「……ゴールド、そんなことは許さない」 この子達はどうしてそうお約束のボケをするかな。 僕も言葉が足りなかったかもしれないけど、器具を取り出したんだから分かるだろ。 二人と漫才している暇が無かったので、手早く器具を組み立て、ポポと僕を固定する。 こうやって密着すると、ポポの胸が僕の背中に当たる。 見ても分からないくらい慎ましやかなんだけど、こうやって見ると確かにあるんだなあ。 そんな邪念が頭をよぎる。 というか、この背中に当たる二つの突起はもしかして…… 「やっとゴールドと繋がれたです……。ポポ、幸せです」 「……殺す。後で絶対殺す」 「ああもう、ポポはちょっと黙って! やどりさんも、早く補助お願い!」 二人のお陰で邪心は見事に吹き飛んだ。 どう考えても楽しめる状況じゃない。 体勢の制約上、ポポ一人で飛び上がるのは難しい。そのため、やどりさんの念動力によって離陸の補助をしてもらう。 やどりさんはブツブツいいがならも、僕達を宙に上げてくれた。 すぐにポポは自分の翼で力強く羽ばたく。 やどりさんも浮かんできたのを確認すると、ポポに進んでもらった。もちろん、やどりさんの速さにあわせてもらって。 「ああ、ポポ、ゴールドと一つになってるですよ。すごく気持ちいいです」 うん、気持ちいいね、風が。 「……殺す。後で絶対殺す。焼き鳥にして殺す」 一方やどりさんは呪詛のように殺す殺す呟き続けてる。 「にしても、本当にやどりはのろまです。わざわざゆっくり飛ばなきゃいけないなんておかしいです」 「……殺す。後で必ず殺す。その手羽もいで殺す」 背中に暖かくて柔らかいものが当たってるはずなのに、背筋に悪寒が走るのは、風を切って進んでるからなだけで無いことは確かだ。 もしかして煙云々っていうのも、僕と抱きつきたいがためだけの狂言なんじゃないか。 そんな疑惑が胸に浮かんだ。 しかし、しばらく飛んでると、僕の目にも、地平線の向こうに煙が見えてきた。 狂言ならそれはそれでよかったんだけど、どうやら本当に何かあったらしい。 「ポポ、通行所の状況はどんな感じ? 建物は見える?」 「建物なんて無いです。黒こげになって崩れてるです!」 ポポの報告は、僕の予想より遥かに深刻な状況を伝えるものだった。 もちろん、何の事件性も無い火事かもしれない。 しかしそんな希望は、ポポの次の言葉によって打ち砕かれる。 「赤い……赤い髪の人間が火を噴いてるです! 人も燃やされてるです!」 赤い髪。火。 まさか、そんなまさか。 188 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 01 59 49 ID ReNKNHut 「……ポポ、その赤い髪の人間の近くに、もう一人赤い髪をした人間がいないか?」 僕は震える声で、何とかそれだけ聞いた。 赤い髪なんて炎ポケモンじゃ珍しくも無い。 だから、まだそれがランだと決まったわけじゃない。 シルバーと共にいる以上、命じれられてそういう行為に手を染めていても不思議は無い。 でも、僕はランが人殺しの道具にされているなんて、信じたくなかった。 「……よく分からないです。帽子……みたいなのを被ってる人が多いです」 帽子……そういえば、前に見たときもシルバーはフードを被っていたな。 それに、ロケット団もRと書かれていた黒い帽子を被っていたような…… 「もしかしてその帽子を被ってる奴らは、赤字でRが書かれた黒い服を着てない?」 「あーる、です?」 そうか、ポポにRっていっても分かんないよな。 「うーん、なんか文字が書いてある?」 「赤で何か書かれた黒い服を着てるです!」 やっぱり、ロケット団が関わっているのか。 当然といえば当然だけど、衝撃といえば衝撃だ。 僕は軽く身構える。 「で、でも、燃やされてるの、その人達ですよ!?」 「えっ!?」 そんな馬鹿な。 その黒い服の人達はロケット団の団員なはずだ。 それが燃やされてるって。 通行所を燃やしたのと、ロケット団員を燃やしてるのは違う人なのか? ロケット団に焼き討ちにあった通行所の人間が応戦しているってことか? 事態がさっぱり把握できない。 通行所ではいったい何が起こってるんだ? ポポがランやシルバーを見たことが無いのが悔やまれる。 どんどん近付いていくにつれ、ようやく僕の目にも、通行所の成れの果てと思われる黒い塊が見えてきた。 その塊はドンドン大きくなり、全景が少しずつ見えてくる。 焼け落ちた通行所を背に、追い詰められているロケット団の集団。 地面に転がった、血を流して倒れているロケット団員と、黒い塊。 そして…… 「シルバー!」 やはりというか、驚くべきというか、そこにはシルバーがいた。 ポポの羽ばたく音で気づいたのだろう、向こうもこちらを見ている。 僕達は見る見る彼らに近付き、そして……あっという間に通り過ぎた。 「ってええええええ!?」 僕の声に驚いたのか、ポポがビクリと震えた。 「ど、どうしたですっ!?」 「な、なんで通り過ぎてんのさ!!」 「ええっ!? 通り過ぎちゃいけなかったですか!?」 「いけないに決まってるだろ! 何しに僕達は急いで飛んできたのさ!」 少なくとも、全力でスルーするためじゃないはずだ。 ポポは急減速し、止まる。 やどりさんもそれにあわせて止まった。 「二人とも、疲労はない?」 これからほぼ確実にシルバーとの戦闘だ。 疲れがあって勝てるような相手じゃない。 「大丈夫です!」 「……むしろ力は有り余っている」 やどりさんの言葉に恐怖を感じなくも無いけど、戦うには問題なさそうだ。 当然、ポポは僕と繋がったままでは戦えないから、地面まで降りてもらって金具を外す。 ポポは思いっきり不服そうだけど、今はそんなのに構ってる場合ではない。 器具を外すと、急いで通行所の残骸まで寄る。 通行所はほぼ完全に崩れ落ち、未だに濛々と黒い煙が上がっている。 元々重厚なつくりではないとはいえ、ここまで酷い有様を見せられると驚かざるをえない。 近寄ると、明らかに熱気を感じる。 189 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 02 00 45 ID ReNKNHut 「やどりさん」 「……了解」 僕が何も言わないうちに、やどりさんは僕の意を察してくれたようだ。 触れてもいないのに瓦礫が動き出し、僕達の前に道が出来る。 同時に、熱を下げるために水をまく。 水は一瞬のうちに蒸発し、眼前は蒸気に包まれる。 瓦礫を割り、白煙の中から現れるなんて随分と凝った登場シーンだ。 そんな場違いなことが思考の端をよぎる。 当然、向こうもこちらのことを把握してるのだろう、最後の瓦礫の壁の前で、僕は唾を飲んだ。 しかしやどりさんはまったくためらい無く、最後の瓦礫を打ち砕いた。 瞬間、瓦礫の向こうから火炎が飛来する。 それを予期していたのだろう、やどりさんは瞬時に念動力で僕達を火炎から避けた。……ただしポポを除く。 ポポは持ち前の身体能力で飛び上がり、かろうじて回避する。 「やどりぃぃぃぃぃ!!」 ポポの怒声が降ってきた。 「あれ、いた……の?」 それを受けるやどりさんは不敵な笑みを浮かべている。 なるほど、焼き鳥。宣言どおりか。 そんなことを思ったことはおくびにも出さず、二人を叱る。 「二人とも、仲間割れなんかしてる場合じゃないだろ!」 そう言っている間にも次々と火炎は飛来する。 瓦礫に阻まれるとはいえ、その向こうからでも十分な熱気が伝わってくる。 やどりさんが噴きかけた水が一瞬で蒸発していく。 ポポは一応回避は出来ているものの、言葉を発する余裕すらない。しかも遠めで見ても、近くを通る炎の熱気で表面が焦がされているのが分かる。 「やどりさん、とりあえずポポをここまで引き寄せてくれ。ちゃんと炎は避けるように」 「私だけでも……」 「いいから!」 「……はい」 ポポがこちらに近寄ったときを狙って、一気にポポを引き寄せた。 ポポは息も絶え絶えで僕達のところに落ちてくる。 そのままやどりさんに飛びかかろうとするポポを抑えて、尋ねる。 「ポポ、ランはどの辺りにいた?」 壁のせいでこちらからでは相手の位置は分からない。しかし炎を避けるために、今は壁を壊すわけにはいかなかった。 「あの辺り、です」 ポポは翼で壁の向こうを指す。 「やどりさん、瓦礫を使ってポポの指したほうを攻撃してくれ」 僕達の周りの瓦礫が次々を浮き、左右に避けて壁の向こうを攻撃する。 壁から伝わる熱がわずかに弱まった。 「このまま壁を破って攻撃!」 僕の命を受けると同時に、やどりさんは壁をそのまま向こうに飛ばした。 それを回避するランが見えた。 久々に見たランは少し姿が変わっていた。彼女も進化したのだろうか。 「ラン!」 僕は叫ぶが、彼女はそれをまったく意に介さず、こちら目掛けて火炎放射を行った。 僕が何も言わないうちに、やどりさんはそれを水を操って相殺する。 両者の衝突点から激しく水蒸気が立ち上る。 壁がなくなったことで、槐市側の通行所の様子が詳しく見える。 あたりには通行所や木々の残骸だと思われる燃えカスや、現在もまだ燃えているものが散乱し、地面は所々煤で黒く彩られている。 血を流した人間や、人だったものと思われる黒い塊がいくつもも倒れていた。 通行所の傍は特に酷い。 炭化した人間が山済みになっていた。 来るときに通行所を背に追い詰められていたロケット団員達が見えた。 そして先ほどまで容赦の無い火炎放射が降り注いでいたということは、彼らごと僕達に攻撃を行ったことを証明している。 今までかいだことの無い嫌な臭いと、今まで聞いたことも無いような阿鼻叫喚で満ち満ちている。 酷い有様だった。 そんな地獄絵図の中に、シルバーは泰然と佇んでいた。 190 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 02 01 24 ID ReNKNHut 僕はすぐにナイフに手をかける。 「二人とも、しばらくランを抑えてて欲しい。倒してもいいけど、殺さないように」 それだけ命令すると、僕はシルバーを睨みつけた。 シルバーは不敵な笑みを浮かべ、僕を見る。 「また会ったな、ゴールド」 「ああ、シルバー」 「どうやらお前はよほど死にたいと見える」 「違うよ。僕は死にたいんじゃなく、殺したいんだ、お前を!」 そう言うと同時に、僕はナイフを放った。 シルバーはそれを手に持ったナイフで弾いた。 しかしこれはただの牽制。僕はすぐにリュックからナイフを取り出し、カバーを外した。 「どうしてこんなことをしたんだ!?」 僕はそういいながら、シルバーとの距離をつめる。 「こんなこと? こんなことって何だ」 シルバーはそういいつつ、二本のナイフを抜き、放った。 狙いは僕ではない。 突然の事態に対応できず、棒立ちとなっているロケット団員の生き残りだ。 短い悲鳴をあげ、二人のロケット団員が地に伏した。 「シルバー!!」 僕はナイフをしっかりと握り、シルバーに襲い掛かる。 「俺は昔言ったよなあ? 弱い奴は生きてる価値が無いんだと」 彼はナイフで僕のナイフをいなし、そのまま僕に切りかかる。 僕は何とかそれを交わし、数歩距離をとった。 黒く焼かれ、地面に転がっている何人ものロケット団員が視界に入る。 憎いはずのロケット団員が、何故だか哀れに見えた。 「……お前は狂っている」 「俺は狂ってなんかいない。狂っているのは……」 そう言いかけたところでシルバーは飛んできた瓦礫に倒された。 視線を向けると、彼女達はランに対して有利に戦いを進めているようだった。 さすがに二対一.ランといえど二人を相手にするのは厳しいと見える。 「シルバー!」 ランが叫ぶのが聞こえた。 ランが負けなくても、二人を完全に抑えなくてはその分シルバーが狙われることとなる。 シルバーはいまや彼女の弱点となっていた。 ここぞとばかりに、僕はよろめくシルバーに切りかかる。 しかしシルバーも然る者で、強撃を受けたばかりにもかかわらず、わずかに斬られるだけで僕の攻撃から逃れた。 ランと合流しようとするが、それをやどりさんが念力で抑えた。 それに気をとられたランを、ポポが強襲しようとする。 勝った。 そう思った次の瞬間、ランの体は白い炎に包まれた。 体に火を纏ったくらいではポポの攻撃を止めることはできないはずだ。 それなのに、僕は恐怖を覚えた。 ポポ、攻撃を中止してくれ! しかし僕の思いはポポには届かず、ポポはそのままランを翼で弾き飛ばす。 悲鳴が響き渡った。 「ポポ!?」 ランに一瞬ぶつかっただけのはずのポポが地面に落ち、悲鳴を上げて地面をのた打ち回っている。 地面に倒され、むくりと立ち上がるランの立つ周囲の地面は、熱によって泡立っていた。 彼女の纏っている、おそらくは耐火性の高いはずの服が見る見るうちに焼け落ち、消えていく。 彼女はポポには目もくれず、生まれたままの姿でシルバーの下に駆け寄る。 やどりさんは水鉄砲を放つが、それはもはやランに届く前に蒸発して消えた。 ランはやどりさんのほうを向き、揺らめいた。 191 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 02 01 51 ID ReNKNHut いや、揺らめいたんじゃない。熱によって揺らめいて見えたんだ。 迫り来る熱の波を見た僕は、すぐに顔を覆って地面に伏した。 やどりさんの悲鳴が聞こえ、次いで熱波が到来した。 これだけ離れているのに、全身が電熱線で焼かれたかのような熱を感じている。 「やどりさん!」 顔を上げた僕の目に映るのは、きぐるみから煙を噴き上げ、膝から崩れ落ちるやどりさんの姿だった。 ランの体を包む炎はすでに消えていた。 彼女を中心に地面は黒ずみ、熱波を浴びた木々は発火を通り越して炭化していた。 僕達と同様に、熱風をもろに受けたロケット団員の何人かが悲鳴を上げながら地面をのた打ち回っている。 まるで焼夷弾でも落とされたようだ。 そんな地獄絵図と化した辺りを一望すると、ランは満足げに微笑んだ。 「やりすぎだ、ラン」 いつの間にか伏していたシルバーは平然と立ち上がり、ランに近付く。 シルバーは耐火服を身にまとっている上、僕に次いでランと離れていた。ダメージはほとんどないだろう。 戦闘不能のポポとやどりさん、満身創痍な僕に対して、まだまだ余力のありそうなランと、しばらくは動けるだろうシルバー。 形勢は一気に逆転した。 「ごめんなさい、マスター」 寄り添うように近付いてきたランに、シルバーは上着を脱いでかけてやった。 「ら、ラン……」 手を伸ばす僕に、ランから思いもよらない言葉がかけられた。 「……なんだ、まだ生きてたの?」 そう言い放ったランには少しもオドオドとした様子はない。 極めて落ち着き払っていた。 「ラン、もういいだろ」 「いいえマスター。マスターを傷つけたアイツをこのまま放っておくわけにはいきません」 ランはそういいながら、愛おしそうにシルバーの傷口をツ、となぞる。 顔をしかめるシルバーをみて、ランは実に幸福そうだった。 そんな様子を見てられなくて、僕は叫ぶ。 「ラン! 君はシルバーに洗脳されてるだけなんだ! 正気に戻ってくれ!」 が、それに対する二人の反応は思いもよらないものだった。 なぜか二人ともキョトンとしている。まるで僕がおかしなことでも言ったかのように。 しかし、すぐに堪えきれないといった様子でランが笑い出した。 「……っあっはははは! ゴールド、アンタどこまでめでたいのよ! 私がマスターに従っているのは私が洗脳されているからだとでも思ったわけ?」 ランがこんな風に笑ったことがあっただろうか。 「え、だって……」 「そんなわけないでしょ! 私がマスターと一緒にいるのは、私がマスターを愛しているからよ!」 「な、なにを……」 「ラン、もう黙れ」 「だ、だってその男は、君の父親を殺したんだぞ! 君の人生を台無しに……」 「何を勘違いしてるのよ。パパを殺したのは、マスターじゃなくて私よ」 「……えっ?」 意味が分からない。シルバーは顔をしかめていた。 「ラン……」 「そんなわけない! ぼ、僕は見たんだ! 僕だけじゃない、みんな見たんだ! シルバーが君の父親を刺した後、君にナイフを突きつけて人質にしたのを!」 「ああそう、皆そう思ってたんだ。どうりで、何時までたっても私が指名手配されないわけだわ」 「ラン、もうやめろ」 「皆勘違いしてるの。パパを殺したのも、その後私を人質にとったように見せかけてシルバーを逃がしたのも、全部わ、た、し」 「ラン!」 鈍器で思いっきり殴られたような衝撃を頭に感じた。 視界に行く筋かの細かい閃光が走る。 誰かが照明を弱めたように、急に視界が暗くなった。 信じられない。そんな訳が…… 僕はもう言葉を作ることができなかった。 燃える、崩れた家を背景に、倒れたランの父親と、ランにナイフを持った腕を向けるシルバーと、その腕を必死で掴むラン。 あの時の光景が鮮明に眼前に蘇る。 確かに、直前の爆発のせいで、誰もランの父親が刺されたところを見ていない。 だって、だれが考える? この土壇場で実の娘が父親を刺すなんて。 ロケット団の幹部の息子を庇って人質の振りをするなんて。 192 :ぽけもん 黒 21話 ◆/JZvv6pDUV8b :2010/04/18(日) 02 02 17 ID ReNKNHut 僕が見た、つまり皆が見たのはランにナイフを突きつけるシルバーじゃなく、腕ごとナイフを自分に手繰り寄せようとするランを必死に止めようとするシルバーだった? そんな、そんなことがあるはずがない。 だって、それじゃおかしい。 もしそうなら、全てがひっくり返ってしまう。 シルバーは本当は何も悪くなかった? 悪いのはランだった? そんなこと、あるはずが無い。 そんなこと、考えられるはずも無い。 ランは一歩、僕のほうに歩を進めた。 「ラン、何を」 「殺さなきゃ、アイツ。シルバーを傷つけたんだもの。生かしてはおけないわ」 一歩、また一歩とランは僕に近寄ってくる。 ランはそこに絶望的な一言を付け加える。 「パパと同じよ」 彼女はこともなげに言う。 「君の父親がシルバーに何をした?」 自分の口からでた声は、まるで自分のものとは思えないくらい掠れていた。 「家に火をつけたの、あれ、パパよ」 「……そんな!」 「ちゃんと考えなさいよ。パパは炎ポケモンよ、炎ポケモン相手に誰が火で対抗しようと思うのよ。ましてマスターだもの、そんな愚行を犯すはずがないでしょ」 「ラン、やめろ、命令だ」 険しい表情を浮かべるシルバーに、ランは寂しげに微笑んで答える。 「ごめんなさいマスター。でもずっと分かってたの。マスターはまだアイツに未練があるってことに。三人で楽しくすごしたあの頃を忘れられないってことを。でも、ダメよマスター」 「何がいけないんだ。それのどこが駄目なんだ!」 「だってマスター、それじゃ私だけを見てくれることにならないもの」 いつの間にか、ランは僕の目の前に立っていた。 僕を見下ろすランの目はどこまでも無慈悲で。 その瞳の冷たさが、どんな言葉より何より彼女の告白が真実であることを物語っていた。 「ラン、それは嘘だ。君はシルバーにそう信じ込まされているだけなんだ……」 「バイバイ、ゴールド。天国で私とマスターの幸せを願っててね」 うわ言を言う僕の頭部に、ランは笑顔で爪を振り下ろした。 絶叫。
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81 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 43 21 ID 637IVz6l 「加奈を、本当に、好きか?」 島村の質問を、そのまま口にしてみる。 そうでもしないとそのまま聞き流してしまいそうな程、それは当たり前なことだ。 頭の中でも、言葉でも、繰り返し繰り返し確認してきた――俺という人間の前提。 「お前にしては愚問だな」 「真面目に答えて下さい」 準備していましたと言わんばかりに即答された。 完全に返答を読んでいなければ絶対に出来ないであろうスピードだった。 それだけ真剣なのだということは理解したが……改めて思う。 愚問にも程がある。 島村は何を言っているんだ? 自分で、俺が加奈を好きだということは分かっていると言っておきながら、何で再びその一言を要求しているんだ? 経験上島村がどこか呑み込み難い性格の持ち主だということは知っているが、同時に言っていることに意味があることも解していた。 だが今の島村は、俺の理解の範疇を完全に超えている。 何か目的あってのことだという確信はあるが、その周囲が煙っていて全く見えない。 兎にも角にも――俺に出来るのは、肯定することだけだ。 人様に誇れるほど大層なものは俺には何もないが、加奈への気持ちだけは負けない自信だけはある。 この唯一無二の感情は、誰にだって否定させはしない。 「加奈のことが、誰よりも好きだ――」 力強く宣言した俺をよそに、瞬きする間もなく、島村は俺の頬を叩いてきた。 それも、かなり重い平手打ちだ。 掌でやられた筈なのに、破裂音と言うには程遠い、鈍い音が響いた。 頬が腫れを通り越して打撲のように青ざめてるんじゃないかと心配してしまうほどの痛みが走る。 手で頬を押さえるという恥を忍びながら、若干呆然としたままの状態で島村を見返す。 「ふざけんのも大概にしろよ」 思わずそんな汚い言葉が漏れたのは、先程ニュアンス的に俺の加奈への想いを否認されたような気分になったというのもある。 しかし何よりも俺を怒りに駆り立てているのは、今俺を見下ろしている島村の目に、溢れんばかりの非難めいたものが込められているからだ。 言葉にはしないが、お前はどういった了見でそんな視線を浴びせてくるんだと言いたくなる。 お前の命令に近い要求を呑んでやったというのに、した途端の仕打ちがこれか。 さっきまでの穏やかな気持ちが払拭されてしまったよ、全く以ってな。 「ふざけて、そんな暴力振るう訳ありませんよ」 「どの口が言うんだ。人のことつい前まで奴隷扱いしておいて」 脳裏に浮かぶ男として屈辱としか表現し様のない光景。 少しだけ笑ってしまったのは、その惨めな姿が自分であるという事実を受け入れたくないが為に、客観視したからだ。 ますます、虚しくなった。 「何で笑っているんですか」 「どうでもいいことだ。それより、こんなに豪快にぶっ叩いてくれたんだ。何か意図あってのことだよな?」 「意味のない行動だってありますでしょうに」 「そんなことはどうでもいいから、俺の質問に答えてくれ」 島村から、悪びれた様子は欠片も見受けられない。 逆に清々しくなる程に当然を身に纏ったその立ち居振る舞いに、沸々湧いていた憤りも萎縮してしまった。 いつもそうだ、こいつは。 俺に対して、傲慢としか取れないような言動を、半強制的納得と共にぶつけてくる。 人並の頭があるなら、いつかそれが俺の逆鱗に触れる時が来るかもしれないという場合を想定出来る筈だ。 にも関わらず、島村はまるで――俺が怒っても、行動には出さないと確信しているかのように振舞っている。 そこまで、俺を信用――そう呼んでいいのかは定かではないが――出来るその要因は、一体何だというのだ? ……今更だが、考えるだけ無駄か。 とりあえず思い直して、間もなく島村が返してくるであろう解答に耳の全神経を集中する。 筋道すら見えなければ、永遠に正解には辿り着けないんだ。 「一つは……単なる、嫉妬です」 「は?」 「今のところは諦めるとは言いましたが、私が誠人くんを好きだという気持ちに変わりはありません。絶賛継続中なんですけど」 「あ……」 「もう少し、乙女心というものを分かって下さい。女の子は繊細なガラス玉なんですから」 「どの口が――」 言うんだか、とは言えなかった。 ふざけて開けてた大口に、島村の親指を除いた右手の四指がすっぽり入れられたからだ。 「憎まれ口しか叩けない、いけない口は、こうして塞いでしまいますからね」 82 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 43 48 ID 637IVz6l 島村の指咥えるのって、これで二度目だな。 同じ女の子の指を強制的に二度も口に含まされるってのは、男としてどうなのかね。 自分の認識を遥か遠くへと追放しながら、追憶してみる。 一度目は、保健室で治療と称した拷問をされた時だったな。 あの時は、頭踏まれたりして、その影響で半ば自棄になって丹念に消毒液を舐め取ってやったんだったな。 ……そういえば、俺が意味を読み取れない素振りもあの頃から始まっていたな。 確か、島村の質問にへの返答に皮肉を込めたら、どこか物悲しい顔をしていたんだっけか。 結局、その真意も分からず終いだったな。 ま、今頃訊いたところで、当の島村本人が覚えている可能性は薄いし、何より俺の勘違いって線も捨て切れない。 どちらにせよ、今となってはどうでもいいことだ。 「あ」 いい加減、涎が溜まってきたので慌てて指を放す。 本来ならば顔を真っ赤にして早急に引き抜くべきところを、何を冷静に俺は数秒間も犬のように咥えていたんだ。 島村の言う通り、身体に受動的快楽を享受する経路みたいなものが確立してしまったのかもしれないな。 「ご主人様とペットごっこは、この辺りで打ち止めにしておこうぜ」 そう言いながら、口内に残った唾を嚥下した。 若干塩辛く感じたが、その理由を追究した先にはきっと恥ずかしい現実が待っているであろうから、そこで思考を打ち切った。 出来ればこの話題はそろそろ転換したい俺をよそに、島村は俺の涎で滑っている自身の指を色々な角度から凝視している。 見てるこっちも恥ずかしくなる程、島村は平然とそれを眺めている。 そのまま続けること十数秒。 「そうですね」 相変わらず自分の指を見るのに夢中になっている様子の島村は、若干心此処にあらずな不安定極まりない口調で呟いた。 それを聞いて、ひとまず安堵の一息を吐こうとしたのも束の間――。 いきなり、島村は自分の人差し指を舐めた。 その唐突さに一瞬度肝を抜かれつつ、何とか平生を装いながらその光景を見据える。 猶も島村はアイスバーでも舐めるかのように、中指、薬指と次々に咥えている。 そんな扇情的な場面を前にして、今俺の中で渦巻いているものはと言えば、情けないながらも「厭らしい」の一言……。 島村を本当の意味で“知る”までに俺が彼女に対して抱いていた清楚――と言うと大袈裟だが――なイメージとのギャップが大き過ぎるんだよな。 半分以上言い訳だけど。 「以前みたいに飾る必要なんてないんですよね」 若干追及したい節があったが、否定されなかった時の反応に困るだろうから無視することにした。 「今は一応ただの友達同士なんですから。友達って、そういう関係なんですよね? 誠人くん」 「そうなんじゃないのか……ねぇ?」 ――友達、か。 頭の中でその言葉を反芻してみるが、いまいち実感が掴めない。 別に気心の知れた友人がいなかった訳ではないが、彼ら(彼女ら)が果たして俺にどれだけの影響を与えていたのか? 俺を占める割合の中で、当然のことながら一番は加奈であり、後は言い方は悪いがその他のようなものだからな。 そんな風に一括り出来る程、友達って存在は矮小なものなのか? それとも、そう思うことは、単に俺が求め過ぎているだけだとでも言うのか? ……馬鹿だな、俺は。 普通の奴は、俺みたいに無駄に深く考えたりなんかしないよ。 皆、小さい頃に心で理解する術を学んでいるんだ――加奈のことに夢中な俺を除いて。 「だとしたら、私は加奈さんより少しだけ得したかもしれません」 俺の適当甚だしい回答に、表情はそのままながらも、島村は僅かながら声を和らげた。 罪悪感に心が軋む音が聞こえたような気がした。 「彼女って立場では決して見れない誠人くんの一面を、垣間見れたんですからね」 「それって――」 「そのこととも関係があるんですか、もう一つの理由を教えてあげます」 続きは遮られた。 だが、そのことはもうどうでも良くなっていた。 島村の言葉から察するに、俺の言おうとした疑問も全てひっくるめた解答を用意しているに違いない。 さっきまでそれを半ば怒りに任せて要求していたんだ。 素直に受け取るのが礼儀だ。 「後、話している間はおとなしく聞くだけで、割り込まないで下さいよ。私語厳禁、これ命令ですからね」 「わかったよ」 島村由紀――彼女に関する幾つもの疑点、それが分かるということへの期待からか、俺は子供のように嘗てない程ワクワクしていた。 「それじゃ、まずは一つ告白しておきます。宿題は早目に終わらせるタイプなんでね」 精一杯の深呼吸を披露した後、始めた。 「私、処女じゃないんですよ」 83 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 44 15 ID 637IVz6l 俺は今、ドッと噴き出る冷汗を感じながらも、心底ホッとしている。 もし発言を禁じられていなければ、島村のあまりにも突発的且つ突飛な告白に対して、俺は何か答えなければなかったのだ。 異性の繊細極まりない問題に、果たして俺はどんな対応が出来ただろうか……? 仮に慰めたとして、それは“処女”の重要性を肯定することになり、そうでない彼女を傷付けてしまう。 かと言って平生を装ったとしても、単純に薄情だと思われてしまうかもしれない。 完全な袋小路――どんな反応も、彼女を追い詰めてしまうのではないか? 「処女喪失の時は、高一の夏。当時付き合っていた男とです」 必死に思慮している俺を置いてきぼりにして、島村は平気な顔でどんどんプライベートなところへと進んで行く。 その吹っ切れた感のある表情と口ぶりだけが、今の俺にとっては救いの手であった。 「事後の第一印象は、男の性欲旺盛な様です。だって、私と彼が付き合い始めたの、その三日前だったんですよ?」 “手”は払い除けられた。 とんだ勘違いをしていたことに、気付かされてしまった。 確かに、島村の淡白過ぎる物言いには、心残りは欠片も見受けられない。 代わりにそこに込められているのは、悲しみや怒りを超越した――純然たる、呆れ。 それは、本来の上下関係を無視した威圧感を備えており、又、俺に畏怖の念を与えるのに足るものであった。 「でも、私に彼を貶める権利はありません。彼の『愛している』が当時の私にとっては全てだったんですからね。馬鹿はお互い様ですよ」 すっかり冷静にさせられた思考の中で、俺を気持ち悪くしていたのは一種の矛盾であった。 女王の風格すら漂う、男を小馬鹿にした島村と、俺に一途に想いをぶつけてきた彼女――その二つの像が、全く一致しないのだ。 結局その根源を辿っていけば、島村が俺をあれ程に好いていた理由は何かという疑問にぶち当たるので、何も進んではいないんだがな。 「その頃の私は、それはもう“いい娘”でしたよ」 島村は、苦笑を間に置いた。 「朝は彼と一緒に登校する為に、まだ光がない時間に起きて、彼の弁当を持参して家まで迎えに行きました。 学校でも彼に恥じない彼女になるよう世間体を気にして過ごすようになりました。 彼と下校する為に部活も辞めました。夜は、彼が求める日はいつでも応じました」 島村から語られる過去の彼女の姿を脳裏に思い浮かべてみる。 あくまで傍観者としての率直な感想を述べるなら――。 「ちなみに、それは全て彼が私に要求してきたことなんですよ」 異常だ。 「まるでゲームみたいですよね。自分の操作通りに動いてくれる人間なんて。 薄気味悪いことこの上ありませんが、彼にとってはそれが至福だったんです」 彼女のそんな様子を見て注意を促さないどころか、逆に火に油を注ぐようなことをしでかすその男も。 「それが彼にとっての幸せと割り切って我慢していた、私にとっても」 傍目から見れば最低極まりないそんな男を妄信的に好きになっていた、島村も。 「“恋は盲目”とは良く言ったものです。私は献身的に尽くしました」 再び、苦笑を一つ。 「ですが、どんなゲームにもいつか必ず訪れてしまいます――“飽き”という段階がね。その後の展開は、大体予想つくでしょう」 言われなくても、今まで散々考えるということに没頭してきた身の俺にとって、それ位のことは訳ないことだ。 今までしてきた努力の継続では、彼氏を自分の下に繋ぎ止めておけない。 そんな状況に陥った島村が――恋の奴隷になった彼女が導き出す答えは、“足りない”ということ。 彼氏の非を決して認めない島村は、彼氏が離れていくのは自分の愛が足りないだけと信じて疑わないだろう。 彼氏は彼氏で、島村への好意を失くしたことでようやく客観的な視点で彼女を見て、気付いたに違いない――彼女の異常性に。 余計に彼氏は離れ、島村は原因を誤解したまま自ら彼氏に恐怖を植え付けるという、負の連鎖が形成される。 ……俺の想定し得る、最悪の結末だ。 「双方にとって非生産的な状況のまま、高二の春になりました。 春――あの男のことですし、けじめをつけるいい機会だとでも思ったのでしょう」 三度目の苦笑を、島村は漏らした。 今まで最も深く、そして陰気な感がした。 「とうとう、別れを言い渡されました」 84 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 44 57 ID 637IVz6l 打って変って、自らの体験談を語るその口調には、やはり清々しさが漂っていた。 その言い草の軽快さたるや、まるで話すことを楽しんでいるかのようにすら思えてしまう程だ。 「当然反発しましたよ。省みると羞恥心で身が溶けそうな位取り乱して、とにかく何としてでも気を変えてもらおうとしましたね」 懐かしむように島村は遠くを見回しているが、俺の心にはそんな余裕は露ほどもない。 感覚的にはほんの前に俺は、正に島村が口にした自身の像と類似する姿を見せ付けられたのだから。 俺の為に体を傷付け、心を侵し、自分を捨てた――形振り構わない、一人の女としての姿。 それがくっきり脳裏に焼きついて離れてくれない。 今でも耳にこそばゆい甘い囁きと、何度も与えられた肉体的苦痛。 飴と鞭を駆使して翻弄された感覚が、体にも心にも染み付いている。 だが、それは決して忘れてはいけないものなのだと思う。 同情だとか罪悪感なんて理性的なことを抜きにして、ただ本能がそうあるべきだと訴えかけてくるから。 「そんな私の様子を見て、狼狽し切った彼が私に言ったこと……何だと思います?」 突然の問い掛けに一瞬戸惑い掛けたが、深呼吸をしている島村を見るに、回答は求められていないようだ。 胸を撫で下ろしていると、島村はゆっくりと俺の方へと近付いてくる。 そして何を思ったか、俺の右耳を親指と中指で抓んで、自分の口元に引っ張る。 「『もう俺に付き纏わないでくれっ!』」 島村の言葉は、至近距離だったのと壮絶な音量だったのとが災いして、聞き取れたものの耳が痛くなった。 キーンとかいう擬音が俺の周りを飛んでいる気がして、耳を押さえる他どうしようもない。 その上、声量という点を除いても、島村の先程の言葉には有無を言わせない気迫があった。 結果的に俺に出来るのは、馬鹿になりかけた耳を壊れ物のように撫でながら、島村の次の言葉を待っていることのみだ。 「彼に最後に感謝した瞬間でした。その言葉を聞いて、私はようやく夢から覚めることが出来たんですからね」 和解――島村が語るこの結末が、俺には少し腑に落ちなかった。 今の島村は俺が好きだということを考えれば当然のこととも言えるだろうが、彼女の常軌を逸した愛情を肌で感じ取った身としては、最終的にはあっさりと退いたことをおかしく思った。 「さて、誠人くん。問題です。私は何故こうもあっさり関係を断ったのか? あ、勿論もう喋っていいですからね」 「……」 「何ですか? その目は」 「いや、お前やっぱり俺の心の中見えてんじゃないかって思っただけだよ」 「そうだったらどれだけ幸せか」 真顔の島村をよそに、俺は女々しく髪を弄くっている。 島村からの問いに答えようなどとは微塵も思っていない。 正解が導ける筈がないと諦めているからというのもあるが、何よりも俺は勘違いすることを恐れていた。 相手の心中についての懐疑の末に間違った結論を出して、そのことで相手を傷付けることだけはもう沢山だった。 ――涙なんて、もう見たくない。 「ところで無言でいるのは、わからないってことでいいですね」 沈黙で肯定する。 「難しく考える必要なんてありません。簡単なことです。私は人として彼を見損なった。だから別れた。それだけです」 「見損なった?」 「女を人形のように使い古して、飽きたら自身の罪悪を自覚しないで一方的に相手のせいにする。どこに魅力があるのですか」 正直、意外だった。 あれだけ俺に対して一途に思いをぶつけてきた島村のことだから、前の相手にも同じだけの愛情を向けているのだと思っていた。 現にさっきまで島村が話していたことによれば、彼女は異常なほど元彼氏に尽くしていたようだ。 なのに、今は彼氏に未練どころか、逆に軽蔑している節すらある。 このことに対して、俺は失礼承知で尋ねずにはいられなかった。 「幾らなんでも、心変わり早過ぎないか?」 「全然」 島村は目を丸くして俺を見つめてきた。 心底言っている意味がわからないとでも言いたげな、おかしな表情をしている。 この即答に、俺は再び沈黙の殻に閉じこもる他の選択を取り上げられてしまった。 「すぐに男を代えられるような軽い女と思うのならご自由にどうぞ。でも、これだけは言っておきます」 息を若干大きく漏らしながら続けた。 「私は、弱い人は嫌いです」 85 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 45 39 ID 637IVz6l 断固として捻じ曲げさせまいという心意気が伝わってくるその言い振りは、島村が胸を張っているような錯覚すら覚えさせた。 「自分の正当性を疑わず、自省をしない――彼のような心が脆い存在を好きにはなれません」 島村のことを軽い女だなんて思わないし、思える訳もない。 一人の相手にあそこまで執着する様は寧ろ、恋愛に対して実直だとすら評価出来るものだ。 だからこそ、島村が元彼氏への好意を完全に喪失した背景には、何か彼女自身の思考回路からの影響があるに違いない。 無論、俺には分からないが。 「彼は私に飽きて、そこで初めて客観視したことで私を気持ち悪く思ったんでしょう。 それは私も同じで、彼のあの言葉で事態を客観視したんです」 言いながら、島村は自分の顔を右人差し指で指した。 「誠人くん、あなたは私の過去を聞いた時、十中八九こう思った筈です。狂っている、と」 「そこまでは思っていないが……」 「なら異常だ、位ですかね。どちらにせよ、常識的に見れば明らかにおかしいと感じましたよね?」 問い掛けながら、目で『分かっている』と教えてくる……島村らしい、実に厭らしい攻めだ。 「全く以ってその通りです。彼は私を玩具にし、私は彼を愛すだけ。 お互い相手のことばかりで、自分を見つめようとしない――そんなの、恋愛とは呼べませんよね?」 ……恋愛とは呼べない……恋愛トハ呼ベナイ…………レンアイトハヨベナイ…………レンアイジャナイ……………… アレ? 「愛すことしかせず反省をしない、私が嫌いな人間に自身がなっていたショックもあって、私は彼と別れました。 ですが、その時はほんの少し、それこそ米粒ほどの未練があったんですよ。 それを完全に払拭してくれたのが、後の誠人くんとの出会いでした。 誠人くん、あなたは知らないでしょうけど、私はあなたのことをあの女子トイレの時以前から知っていたんですよ。 その時、あなたは丁度加奈さんに――“上書き”されているところでしたよ。 当時の光景を振り返ってみても、壮絶だったとしか言い様がない程、衝撃的でしたよ。 自分より一回りも小さな女の子に滅茶苦茶にされているあなたの姿は、惨めという言葉がお似合いでしたよ。 でも、泣きながら謝っている加奈さんを笑顔で許しているあなたの姿を見た瞬間、胸が高鳴りました。 『俺も悪い』と言いながら加奈さんの頭を撫でているあなたは、私が見てきた誰よりも格好良かった。 あなたとなら、自分の罪を認める強さのあるあなたとなら、私は幸せになれる……あなたが欲しい、こう思うようになったんです。 それからは密かに機会を伺っていたんですが、まさか女子トイレ前で会うとは思いませんでしたね。 しかも、また“上書き”されているんですから、二重に驚かされましたよ。 でも、そこから関係を持てるようになったんですから…………って、誠人くん、聞いているんですか?」 「……」 「誠人くん?」 「……どういうことだよ、島村? どうして、どうしてそんなこと言うんだよ!?」 荒れる息をそのまま、俺はベッドから瞬時に飛び退いて島村から距離を取った。 訝しげな視線を送る島村に対して、威嚇するように俺は彼女を睨みつけている。 「そんなことって、何のことですか? ほら、冷静になって――」 「来るなよっ!!」 立ち上がろうとした島村を言葉で制してみるものの、俺の言葉など意に介さず彼女はスッと立ち上がった。 更に俺は島村から離れる為に後退りした。 「本当にどうしたんですか? もしかしたら傷が深かったのかも……」 「おかしいぞ、この病院。さっき島村は大声を出した。そうでなくとも今俺は叫んだのに、何で看護婦も誰も来ないんだよ?」 島村と話している間は熱中していてそんな些細なことにすら気付かなかった。 それに、俺が今いるこの部屋にはベッドが幾つもあるのに、俺の以外は全て空席状態。 俺以外は患者が誰もいないなんて、どう考えたって変だ。 「誠人くん、落ち着いて下さい……。話し合いましょうよ……」 「もう一つ」 何よりも島村に追及したいことがある。 知りたいのは、あの言葉に関して――“故意があるかないか”ということ。 「お前は元彼氏と自分の関係を恋愛とは呼べないって言ったよな? それは、俺と加奈の関係に対しても言ったのかよ?」 86 :上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] :2008/01/13(日) 21 47 18 ID 637IVz6l お互いに相手のことばかりを気にして、自分の行動を振り返れない。 そんな緊張状態の中で何とか保たれてきた、俺と加奈の関係。 島村と元彼氏との関係に類似するそれを、島村は恋愛ではないと否定した。 自分は俺から身を引くと言っておきながらだ。 ……勿論、俺の思い過ごしだという可能性もある。 そうであってくれ。 いつもみたいに、馬鹿にして一蹴してくれ。 「ははは……私、馬鹿ですね」 束の間を置いて放たれた言葉。 似ているけど、違う。 『私』は余計だ。 素直に俺を馬鹿呼ばわりしてくれて構わないから……。 「気付いていましたよ、“矛盾”に。私が求めているものと、それがそうである為に必要なことは、決して交わらないってことにね。 でも……もう戻れないところまで来てしまったんです。私もあなたもね。こうなったら、形振り構っていられません……ははは」 島村が近付いてくる。 再び下がろうとしたが、壁にぶつかってしまった。 ドアを探したが、島村を挟んで逆側にあった。 逃げ道はない。 「誠人くん、私は二つ嘘をつきました。それを教えて、謝りますから、その暁には……ふふふ、ははは……」 島村しかいない。
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745 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 50 27.19 ID /YmBUMpA [2/9] 時刻は未だ早朝。 窓からではなく、キチンと玄関からポケモンセンターに入場した。 ロビーで香草さんに向き直る。 「香草さんはここで待ってて。事情を説明してくるから」 「どうして? 私が一緒にいたらダメなの?」 「ダメっていうか……また喧嘩になって欲しくないから」 「大丈夫よ。私、もう負けないから」 圧倒的に間違った論点で大丈夫とか言ってるうちは大丈夫じゃない。 そういえば香草さんはあれから進化して、能力も倍増している。 香草さんは基本的に自信過剰とはいえ、実際、今度は勝算があるのかもしれない。 でもそもそも最初から勝算云々の話じゃないんだ。 「と、とにかくここで待ってて。すぐ戻ってくるからさ」 香草さんは明らかに不満げだ。 このまま問答を続けたところで、おとなしく従ってくれるとは思えない。 そんなとき、僕の脳裏に一つの案が閃く。 冷静になって考えればどう考えても有効とは思えないその案だったが、そのときの僕は浮かれていたのだろう、その案を実行に移してしまった。 膨れっ面の彼女の肩を抱くと、彼女が何かリアクションをとる前に、そのまま彼女の唇に口付けた。 「少しだけ待っててよ。それじゃ」 顔を真っ赤にして、唖然とした表情をしている香草さんにそれだけ告げると、足早に部屋に向かった。 あーあー恥ずかしい。僕は何でこんなことを! 顔を真っ赤にしたのは香草さんだけではなかった。 急に恥ずかしくなり、地面をのた打ち回りたくなる。 あまりにもキザだ。いくら香草さんがデレデレだからって調子に乗るのも大概にしろ! 廊下を早足に歩きながら、僕は叫びだしたい衝動を必死に押さえる。 後悔先に立たずだ。まったく。 あっという間に部屋の前まで来た僕は、顔の火照りを沈めるために深呼吸を繰り返し、それから部屋に入った。 「やあ、ゴールド」 驚いたことに、やどりさんは平然とベッドに腰掛けていた。 まるで言う前から僕がいなくなった理由を知っているかのように。 「いったいどこに行っていた?」 やどりさんは微笑みながらそう続ける。 僕は彼女が発す独特の雰囲気に気圧されていた。 さっきまで浮かれていただけに、余計に動揺が起こる。 「あ、あの、さ、落ち着いて聞いて欲しいんだ。ちゃんと最後まで」 「もちろんだ」 やどりさんが落ち着いているのはいつものことである。 しかし、こちらが動揺しているときにこうも平静に振舞われると、どうも落ち着かない。 僕は切り出すのを少し躊躇った。しかし、すぐに口を開く。 「……香草さんと、会ってきたんだ」 ジリ、と空気が軋む音が聞こえた。 「……どういうことか、詳しく話して」 空気が張り詰めたと思ったのは、僕の気のせいではないだろう。 「その前に、約束して欲しいんだ」 「約束?」 「もう香草さんと喧嘩したりしないって。あ、いや、喧嘩しても、言葉で済ませる、手は出さないってことを」 「ゴールド、何を言っているかよく分からない。あの女はもう私達には関係ない。そうでしょ?」 やどりさんの言葉には有無を言わさぬ圧力が含まれていた。 寸簡、息が詰まった。しかし、気おされるわけにはいかない。 僕は拳に力を込めると、意を決して話し出す。 「……単刀直入に本題から言うよ。パーティーに私情を持ち込むことはごめんなさい。……僕は香草さんと付き合うことになった」 瞬間、突風が僕の両脇を駆け抜けた。 窓は開いている。 だから風が吹く条件は揃っていて、それはただの突風であっても何の不思議も無い。 そうだ。やどりさんがサイコキネシスを使う理由なんて、ない。 無いはずだ。 「……それで?」 746 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 51 29.40 ID /YmBUMpA [3/9] 「だ、だから、香草さんと契約解消はしない。出来れば、皆で一緒に旅を続けたいんだ。だから、仲良くして欲しい」 やどりさんは無表情で押し黙っている。 「僕の我儘でこんな面倒なことになってしまったことは本当に申し訳ないと思っている。けど、僕は……」 いや、言い訳はやめよう。面倒に巻き込まれるほうからしたら、どんな正当な理由だって理由にはならない。 「せ、せめて、仲良くは無理でも、喧嘩はしないで欲しいんだ。この間みたいなことは、絶対に……」 「大丈夫」 肯定するやどりさんの言葉はやけに力強い。嫌な予感しかしない。 「だ、大丈夫って?」 「正直に言って欲しい。あの女に何を言われたの?」 「な、何って……『好き』って」 「違う。そうじゃない。あの女は力を背景にゴールドを脅迫した。そうでしょ?」 有無を言わさぬ強い口調だ。だけど、それに従うわけにはいかない。 「ち、違うよ! 僕は本当に……」 「……大丈夫。無理をしなくて、いい。私がついている」 まずい。致命的に話が通じない。 しかもやどりさんから漂っている空気は、以前香草さんが凶行に及ぶときのそれに似たものがあった。 正直、やどりさんはまともに戦って勝てる相手じゃない。 何せ、超能力は目に見えない。故に回避がとても難しい。しかも地形の拘束を受けない。つまり地の利は彼女にある。さらに、超能力相手に攻撃は無駄だ。僕の最強武器である忌まわしき毒ナイフも、サイコキネシスの前にはまるで無力だ。 となると残された手は逃走のみ。僕が煙玉に手を伸ばすのと、彼女のサイコキネシスが僕を捕まえるの、どちらが速いだろうか。 ……愚問だ。もう僕は彼女の手中にあるも同然、彼女がその気になれば、僕に打つ手は無い。 僕が斬ることのできるカードは説得の一枚のみ。苦しい状況だ。 この恐怖がただの下らない杞憂であることを願うばかりだ。 「やどりさん、落ち着いて聞いて欲しい。僕は本当に脅迫されたわけでもなんでもないんだよ。本当に香草さんが好きなんだ」 僕がそれを告げた瞬間、彼女の周りを立ち込めていた“嫌な感じ”が急激に縮小していくのを感じた。 「……そう」 やどりさんは泣きそうな顔でそう呟く。 「……分かった。私は、ゴールドの言うとおりに、する」 彼女は途切れ途切れにそう答える。 先ほどの不穏な気配からすると、妙に聞き分けがよく思える。 いや、やっぱりただの杞憂だったのかな。 それとも、やどりさんは僕のことをまるで恩人のように思っているから、僕が自分の意思でそう決めたのなら、それに反対したくはないのだろうか。 「あの、香草さんも話せば分かってくれるようになった……と思う。だから大丈夫だよ」 「……うん」 彼女はただ悲しげに俯くばかりだ。非常に心苦しい。 しかしとりあえずこれで第一の障害はクリアーだ。 後は香草さんがなんと言い出すか、そして―― ――ポポがどう出るか。 ポポが僕に執着してるのはもう多分間違いない。 となると、この状況をおとなしく見過ごすとは思えない。 ……物騒なことにならなきゃいいけど。 いったいなんというべきか。 今から頭の重い話だ。 ま、まあ今はとりあえず目先の成功を喜ぼう。 「じゃあ、香草さんを呼んでくるよ」 そう言って、僕は部屋を後にした。 ロビーに戻ると、香草さんは未だキスの衝撃から抜け出せていなかった。 赤い顔をして、左右に揺れながらどこか遠くを見ている。 早朝のポケモンセンターに不審者が二人。 無論一人は香草さん。そしてもう一人は、それを見てついにやっとしてしまった僕である。 「香草さん、迎えに来たよ」 「ダメよゴールド、断然シルクより綿の方が……って、え?」 え? って、僕がえ? って感じだよ。 「やどりさんに分かってもらえたよ。これでまた一緒に旅が出来る」 僕がそう告げたとき、香草さんの表情が若干曇った。 「あー、確かにやどりさんに言いたいことはあるだろうけど、出来るだけ穏便に……」 「ねえゴールド、私だけじゃだめなの?」 「はい?」 747 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 52 51.03 ID /YmBUMpA [4/9] 「私と二人だけじゃ……」 これはもしかして…… 香草さんは嫉妬してるのか? 「だってゴールドには私だけを見ていて欲しいし……」 香草さんは口に手を当て、もじもじしながらそう続ける。 これは間違いない! 彼女は嫉妬している。 か、可愛い! なんてかわいいんだ香草さん! 恥ずかしげに振舞う香草さんがまさかこんなに可愛いなんて! 今まで香草さんはすぐ照れ隠しに暴力を振るってきたからとてもそれを愛でる余裕なんて無かったけど、こうしてしおらしく振舞う香草さんの可愛さはもう今まで彼女から受けた虐待全て水に流せるくらい可愛かった。 数秒その可愛さに見とれた後、ハッと正気に返る。 危ない危ない。今はこうしてしおらしく振舞ってるけど、いざやどりさんを前にしたらどう出るか分からないのが彼女だ。ちゃんと話をつけておかないと。 上がりっぱなしの頬の筋肉を下げ、涎を拭って切り出す。 「香草さん、やどりさんはあくまでパーティーの一員だよ。僕の彼女は香草さんだけだよ」 ……なんてキザったらしい発言だ。我ながら嫌になる。 もしかして僕は思ったよりかっこつけたい願望が強いのだろうか。 しかし、こんな台詞でも、彼女には効果覿面だったらしい。 再び顔を真っ赤にしてフラフラしている。 「か、彼女……ゴールドのたった一人の彼女……ふ、うふふふふふ……」 心ここにあらず。本当にすごい浮かれっぷりだ。 畳み掛けるように言葉を重ねる。 「そうだよ。だから決して暴力を振るったりしちゃダメだよ」 「う、ん。暴力なんて……えへへへ……」 よし、これでいいだろう。 ちょっと正気じゃない気もするけど、多分大丈夫さ。 ニコニコしていた香草さんも、さすがに部屋の前に来ると顔が引き締まった。 静かに力を巡らせているのを感じる。 臨戦態勢だ。 僕は咄嗟に跳びかかれないよう、自分が邪魔になるような位置に立って戸を開けた。 床にうつぶせにやどりさんが倒れていた。 「や、やどりさん!?」 僕は慌てて駆け寄り、名を呼ぶ。 「ん、あ、ゴールド……」 答える声は本当に力が篭っていない。 僕がここを離れていた数分の間に、一体何があったんだ? 「やどりさん、どうしたの!? 誰に襲われたの?」 「襲われてなんか、無い……」 「へ?」 「……疲労が出た。動きたくない」 ……過労で倒れたということだろうか。 確かにやどりさんは自身も怪我を負ったにも関わらず、ずっと僕を気遣ってくれていた。疲れていても当然だ。 「大丈夫? 看護婦さん呼ぶ?」 「いい……しばらくこのままでいれば、大丈夫」 「せめてベッドとか……」 「いい」 そういうので僕は離れ、ベッドに座った。 警戒した様子の香草さんがそろそろと入ってきて、僕の隣に腰掛ける。 そうか、確かに、何かの作戦にも見えなくも無い。まったく意図は見えないけど。 「ま、まあ、さっき説明したけどさ、香草さんが帰ってきて、それで、その、僕と私的なお付き合いをすることになったんだ」 どうも恥ずかしくて説明し辛い。 香草さんはこれ見よがしに僕の腕に手を絡めてくる。 正直、蛇にまきつかれたネズミの心地がしなくも無い。 「そういうことだからよろしく」 香草さんはそう言って不敵に微笑む。 どうしてそう挑発的に言うかなと思ったけど、直接的な物言いじゃないだけまだマシか。 748 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 54 25.30 ID /YmBUMpA [5/9] やどりさんは寂しげに、そう、と呟いた。 暫し沈黙が流れる。突然、思い出したようにやどりさんが言った。 「……それでゴールド、どうする?」 「どうするって?」 「……警察署」 僕はその一言で、急に現実に引き戻された。 ああ、何てことだ。 どうして僕はこんな大事なことを今まですっかり失念していたのだろう。 香草さんとの再開と告白ですっかり浮かれてしまって、頭から吹き飛んでいた。 僕の全身を強い後悔が襲う。 僕は後先考えずになんてことを。 これで万が一僕が逮捕されるようなことになったら、香草さんに顔向けできない。 背骨が氷に変わってしまったかのようだ。 冷や汗が後から後から噴し出してくる。 どうしよう。 香草さんは不思議そうに僕の顔を覗き込んでいる。 そうだ。香草さんはここに至るまでのいきさつを一切知らない。 僕はなんて説明すればいい。 目の前にある、この美しい顔を曇らせるのか。 ああ、うわあ。 思考がグルグルと加速していき、ドンドン寒気を増していく。 そんな僕の脳の混沌を、轟音が吹き飛ばした。 「な、何だ?」 咄嗟に窓を見ると、窓の向こうで一筋の閃光が空に上って消えていくところだった。 な、何だアレ!? 多分ポケモンの、それも相当に熟練度の高い高威力の攻撃だ。 「な、何? どうしたの?」 「ロケット団?」 街中であんな攻撃ぶっ放すんだ、その可能性は高い。 しかしロケット団だとしたら本当にマズい。 あれだけの攻撃を行えるポケモンはおのずと限られてくる。 戦闘力で言えば一級クラス。 そんなのを相手にしなくてはならないとなったら大変だ。 しかしだからといって見過ごしたくは無い。 このタイミング、あの通行所での出来事に関連している可能性は大いに有る。 となると、僕だって無関係じゃない。 昨日布団に篭って考えた。 そして結論に至ったことの一つ。 多分シルバーはロケット団を怨んでいた。 ロケット団の現れた場所に現れたのはロケット団と行動をともにしていたからじゃない。 きっと、ロケット団を倒してまわっていたんだ。 彼はずっと憎かったのだろう。 自分の、自分達の運命を歪めてしまった存在であるロケット団が。 ランの言うことが正しければ、今でも諦めきれない、あの頃の僕達の関係を壊したロケット団が。 ならば、僕はロケット団を潰さねばならない。 悪を倒すとか、そんな崇高な理念じゃない。 僕達の平和を奪った相手に対する、単なる私怨。 しかも、相手の力は強大。……結局、僕一人では何も出来ない。 周りを巻き込んでばかり、迷惑をかけてばかり。 みんなに心配をかけて、みんなの力を借りて、みんなを危険に晒して。 分かっている。それでも、今少し僕はこのエゴを貫きたかった。 「香草さん、やどりさん、付き合ってくれるかな。僕は、あれを放って置けない」 「ねえどうして、ゴールド。危ないよ」 「……ゴールドがそれを望むなら」 否定する香草さんと肯定するやどりさん。 「わ、私だって! 危ないってのはゴールドが心配ってだけだから! もちろん、ゴールドがそうしたいって言うなら協力するわよ!」 「ありがとう」 ごめん。 心の中で呟いて、僕達は光線の上がった現場を目指して出発した。 749 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 55 16.97 ID /YmBUMpA [6/9] 「あ、あれ!」 香草さんの指差すほうを見ると、誰かが現場と思しき場所から飛び立っていた。 すごいスピードで動き、あっという間に見えなくなる。 多分あの光線の主だ。 そのまま僕達は現場を目指す。 現場はすでに警察によって保護されていた。 何の変哲も無い民家。その一隅がぽっかりとえぐれ、なくなっている。 警察の人が群がる野次馬に対して説明をしていた。 「ここはロケット団のアジトの一つです。危険ですので近付かないでください」 やはりロケット団か。 野次馬が話してるのが聞こえる。 「ワタルさんが乗り込んでこのアジト潰したらしいぜ!」 「すごいな、さすが四天王だ」 「あの一昨日の頭痛、アレ、ロケット団の仕業だったらしいわよ」 「ここがその基地だったんですって」 「まあ怖い」 「だから被害がこの辺だけだったのね」 大した時間もかからずに、知りたい情報は大体手に入った。 多分そうだろうと思っていたけど、あの頭痛の原因がロケット団だったのには驚かされた。 あんな大規模にあんなことを出来るのだから、恐怖を禁じえない。 そう恐怖に慄いていると、後ろから肩を叩かれた。 香草さんかと思い何の疑問も無く振り返る。 が、振り返ったときに気づいた。 香草さんは今僕と手を繋いでいる。だから後ろから肩を叩くのは難しい。 そしてやどりさんは宙に浮いて、上から建物を見てもらっている。現に先ほどまで僕の視界にあった。 じゃあこれは? 視界の先には、フードを目深に被った人間がいた。 瞬間、全身の毛穴が開く。拍動が速くなる。体がカッと熱くなる。 ちょっと待て、そんなバカな。 思考は困惑と恐怖で真っ白になり、瞬間的にパニックに陥る。 だって、そこにいたのは―― 「ちょっとついてきてくれ。ここはあまりよろしくないからな」 ああ、間違いない。いやしかしそんなはずは。だってお前は…… 「死んだはずだろ、シルバー……」 問いかけというより、僕の意思とは別に、勝手に開いた口からこぼれたと言ったほうがいい。 僕の目の前にいたのは、死んだはずの――僕が殺したはずの、シルバーだった。 背中を中心に、上体に嫌なものが駆け巡る。 一拍遅れ、ようやく腰の武器に手を伸ばす思考が働く。 「ゴールド?」 僕の様子に気づいたのか、香草さんが僕を向き、話しかける。 香草さんもすでにシルバーの射程内。まず――いや? 「その手を下ろせゴールド。殺る気ならとっくにやってる。お前もそれくらいは分かるだろ?」 シルバーはそう言って不敵に笑った。 確かにその通りだ。今の僕は完全に油断していた。後ろから一突きされれば、それで終わりだ。いちいち話しかける意味がない。 それに、ランの言うとおりなら、シルバーは悪ではなかった。……いや、ランの言うことをそのまま信じるのは危険だ。 単に洗脳されて言わされていただけっていう可能性だって十分にあるのだから。 そうなれば、僕を殺さなかった理由だって、僕を懐柔して手駒にすることが出来ると考えたからかも知れない。 警戒は怠れない。 でも、現時点ですぐに僕の命に危険が及ぶことは無いだろう。 ……まったく、死んでると思っていたときは実はいい奴だったように思えたのに、生きてると分かった途端この心変わりとは、僕という人間は…… 必要な警戒といえども、自分が卑しい人間のように思えて、少し自分が嫌になる。 ともあれ、とりあえずは彼に従うことにした。 何故生きているのかを初め、疑問は絶えない。 そんな時、隣で急激に不穏な気配を感じた。 見ると香草さんが臨戦態勢に入っている。 無理も無い。香草さんは何も知らないのだから。 750 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 55 57.76 ID /YmBUMpA [7/9] 「香草さん、大丈夫だから落ち着いて」 僕がこういうと、香草さんはポカンと僕を見た。 「ちょっと来いよ。話がある」 台詞だけ聞くと喧嘩でも売っているようにしか聞こえない。 香草さんが体を硬くするのが分かる。 「分かった」 やどりさんにも合図を出して、僕らは人ごみを離れた。 「それで、どこに行く気だ?」 先頭を無防備に歩くシルバーに問いかける。 今なら、僕でも簡単にシルバーを殺せる。それくらい無警戒だ。 「どこか、人気の無い場所がいい。俺は人に見られるとまずいし、人に聞かれたくない話だからな」 「あまり人気の無い場所だと僕は嫌なんだけど」 「何だ? 言っただろう、殺るつもりならとっくに……」 「人目につくのを避けただけって可能性もある」 「やれやれ、お前は昔っから変わってないな。分かったよ、そこなんかどうだ?」 シルバーはそう言って一軒のオープンカフェを指差した。 客は一人も見当たらない。それに一応街中ではあるので、僕の都合にもあっていた。 一つのテーブルを囲んで、香草さんを僕から向かって左に、やどりさんを右に挟む形でシルバーと向き合って座った。 「おうおう、大層なボディーガードだな」 茶化すシルバーに香草さんが食って掛かる。 「ボディーガードじゃないわ! 彼女よ!」 ……そっち? 「何だ、初心な面してやることやってんじゃねーか」 やること? と言われてキョトンとしている香草さんと、表情を険しくしたやどりさんが横目に見えた。 「そんなことをわざわざ言いにきたのか?」 「そう怒るなよ。……ま、本題に入るか」 空気が引き締まった。彼の鋭い眼光に、僕は少し恐怖を覚えた。 「まず一つは、ロケット団を潰すのを手伝って欲しい」 唐突な申し出だ。 僕の考えていたこととすっかり合致していたため、僕の鼓動が高鳴るのが分かる。 「その前に、お前は本当にシルバーなのか?」 このままではシルバーのペースに乗せられてしまう。 一旦落ち着く意味もこめて、僕は話を変えた。 「本当に疑り深いなお前は。俺がシルバーじゃなかったら誰だって言うんだ」 「……お前はナイフに塗られた毒で死んだはずだ。あの毒はその辺の生半可な毒とは訳が違う」 「確かに、きつい毒だった。だが知ってるか? あの毒、解毒に必要な生薬は普通の毒と変わらないんだぜ?」 そう言ってシルバーは不敵に笑う。その目には絶対の自信。 「な、そんな話、聞いたことも……」 「俺がここにいるのがその証明だ。それに、俺があの毒を受けたのは初めてじゃない……ま、そんなことはどうでもいい。これで満足か?」 納得は出来ない。しかし今目の前にあるのが真実だ。 糞。僕の心労と時間を返せ糞野郎。 「それで、協力してくれるのか? くれないのか?」 「……あてはあるのか?」 「あ?」 「ロケット団を潰すあてはあるのかって聞いてんだよ」 「ああ。お前も見たろ? あのアジトの残骸。今頃ランが逃げ出した幹部を締め上げて吐かせてるはずだ。それに、どうも近いうちにロケット団に大きな動きがありそうなんだ。だから、それで集まった奴らを一網打尽って計画だ」 「そんな曖昧な……」 計画と呼べるような代物じゃない。 「ゴチャゴチャとした小賢しいことは性に合わん。現に今までそれで上手くやってきた」 「虚勢を張るなよ。今までは運よく失敗しなかっただけだろ。お前は昔っから……」 「あーうぜー。またお得意のお小言かよ」 「まったく……」 溜息を吐いて、実感する。 751 名前:ぽけもん 黒 24話 ◆/JZvv6pDUV8b [sage] 投稿日:2011/05/04(水) 01 56 46.58 ID /YmBUMpA [8/9] コイツはあの頃のままだ。 郷愁的な気持ちで胸が一杯になる。 しかし、ならば聞かなければならない。 「ランは……本当にああなのか?」 「……あの日以来ずっとあんな調子だ。特に最初のほうは大変だったよ。お前も知ってのとおり、あんな奴じゃなかったからな。だが、段々分かってきた」 「扱いが?」 「アイツの行動理念が。アイツは……俺を傷つけるものを許さない。だからアイツの親父さんは殺されたし……そうだ、分かってると思うが、お前もやばいぞ。 何せ、俺はお前のせいで死に掛けたんだからな。怒り狂ってたぜ。お前を目の前にしたら、よほどのことがないとお前を殺そうとするだろうな」 ハハ、とシルバーは笑う。 笑い事じゃないだろ。 「そもそも、あのとき……ランが言ったことは本当なのか?」 「本当だ……と俺が言ったら、お前は素直に信じるのか?」 「……信じるわけが無い」 「だろう。俺が何を言おうが意味はない。が、俺がロケット団を潰そうとしていることと、ランに近付いちゃならないことは、俺の行動で分かっただろ」 疑う材料はたくさんある。 しかし、こうして直接会って話してみて、疑う気持ちは大分薄れてしまった。 コイツは直情的で短絡的なあのころのままだった。 「大丈夫なのか? のこのこ僕の前に顔出して。ランは平気なのか?」 「問題ない。アイツの扱いは俺が一番よく分かってる。そもそも、アイツはお前がこの町にいることだって知ってやしない。知ってたら、今頃大変だろうな」 ランの扱いを一番よく分かっている、か。言ってくれるね。 「お前は僕がこの街にいるって分かってたのか?」 「ああ。ポケモンセンターの中にちょっとした伝手があってな。おかしな動きは全部把握している」 ポケモンセンターも安全な場所とはいえないらしい。まったく、しっかりして欲しい。 「ポケモンセンターよりロケット団の内部に伝手を持っておくべきだろ。それだったら、もっと計画の細かいことが分かるのに」 「うるせーな。伝手はあるにはあるが情報が入ってこないだけだ」 「それじゃ意味ないだろ……」 「そうだ、そろそろ俺は行かなきゃならん。だから答えをくれ。協力するのか、しないのか」 「こんな短い時間で、しかもこんな少ない情報で決めろって言うのかよ。分かってんのか、僕は数日前まではずっとお前を恨んで生きてきたんだぞ」 「優柔不断やってる時間はねえ。だが、俺はお前を諦める気はねえぞ」 くそ、相変わらず無根拠な自信に溢れやがって。 僕は迷った末、メモ帳に数字を書き、シルバーに差し出した。 「なんだよこれ」 「僕のポケギアの番号だよ。もう少し細かいことがわかったら連絡しろ。全てはそれ次第だ」 「メンドくせえ奴だな」 「お前は行き当たりばったり過ぎるんだよ。大体前だって……」 「はいはい、説教聞いてる暇はないんでね。俺はもう行かせて貰う」 僕の手から紙を引ったくり懐にしまうと、シルバーは立ち上がり、僕達に背を向けて歩き出した。 「またな」 奴は歩きながら言った。 「いいの? 追いかけなくて」 シルバーの後ろ姿が大分小さくなった頃。 香草さんが不思議げに聞いてきた。 確かに、事情を知らない香草さんにとってはさっぱり意味が分からないだろう。 いや、それでも、やはり追いかけたほうがよかったのだろうか。 ……またな、か。 「参ったな……」 僕は手のひらで目を覆い、天を仰ぐしかなかった。
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684 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 25 50 ID HLEr4wWp 「カラオケ?」 「そ、カラオケ!ほら陽菜ちゃんが転校して来た日に行こうとしたけど・・・お前がキレておじゃんになっただろ?」 あ~そんなこともありましたね。すっかり忘れてました。 今は飯の時間。もちろん、僕は購買で買った(買わされた)パンを食べている。 「だから今週の土曜にカラオケ行こーぜ!!」 (あ~祥子さんとのカラオケデート!!) 「・・・姉ちゃんは連れて行かんぞ?」 「なんでだよっ!!大勢の方が楽しいだろ!!」 なんでじゃない。これ以上寿命を縮めたくないんだ。 「嫌だ。姉ちゃんだけは誘わない」 できれば岡田さんも遠慮願いたい。 「・・・とおっしゃっていますが?」 は?大和は誰に話しかけてんだ? 「ほぅ・・・ウチだけをのけ者にしようってのか?」 あ、あれれ?そのドヤンキーボイスはお姉さまでしょうか? 「慶太・・・歯くいしばれ・・・」 またそのパターンですか?それについてはすでに対処法を考案していますよ? 僕は姉ちゃんに振り返った。そして・・・ 「今日もお美しいですよ、お姉さま☆」 バチーーーーーン!!! どうやら対処法は失敗だったらしい。できるだけ早く良い案を見つけないと。 「って゛か゛な゛ん゛て゛こ゛こ゛に゛!?」 僕は腫れあがった頬を押さえながらそう訊ねた。 ってか、あれ?秋祭りの時、もう暴力は振るわないって言ってなかったっけ? 「ウチの舎弟からワンコがあってな」 え?舎弟? 「祥子さん実はですね・・・」 き、貴様かぁ!!何度僕を裏切れば気が済むんだぁぁぁぁ!! 「今週の土曜にみんなでカラオケに行かないかと思いまして・・・どうですか?」 「しかたねぇな・・・愚弟のお守も姉の仕事だからな」 (慶太とカラオケか~!!一緒に何歌おっかな~♪) そうだ!!僕が当日行かなければいいだけの話――― 「何の話?」 「あ、陽菜ちゃん!実は今週の土曜に(以下略)どうかな?」 「うわ~、行きたい!!行きたい!!慶太はどうするの?」 「え?もちろん行くけど?」 陽菜さんは何を言っているんだろ?僕は初めから行く気満々だったのに。 「ふ~ん・・・その話、彼女は何も聞いてないんだけど?」 わ、バカー!!姉ちゃんの前でそんなこと言っちゃだめー!! 「・・・彼女?」 (そういやぁコイツ前もそんなこと言ってたような・・・まさか慶太と付き合ってるとでもいいたいのか?) 「私早川君とお付き合いしているんですよ、お姉さん♪」 うっ・・・わ・・・終わった・・・ どうやら今日はビンタデーのようだ。 685 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 26 25 ID HLEr4wWp 只今午後7時。 なんとか今日という日を乗り切った僕は疲れた心を癒すことにした。 でもこんなに疲れ切った心ではオススメ1を試しても効果は薄いだろう。ならばオススメ2だ。 しかし、これを使っていいものか? オススメ2には色々と問題点があるのだ。 一つは中毒性があること。はっきり言って抜けられなくなるのだ。以前試した時にはあまりの中毒性に携帯を破壊するしかなかった。 そして・・・相手に悪影響を及ぼすのだ。これまた以前試した時には1週間僕の家に泊まりに来ては離れなかった。 だが今の心を修復するにはこれしかない!! 僕はある人物に電話をかけた。 「あ、もしもし恭子ちゃん?」 「ハ、ハイ恭子です!!け、慶太さんからの電話うれしいな~///」 「フフ、ありがとう」 よし、そろそろ始めるか。 「ところで恭子ちゃん・・・俺の事どう思う?」 「え!?どうって・・・だ、大好きです・・・///」 「え?良く聞こえなかったんだけど?」 「だ、大好きですっっ!!」 「頭にお兄ちゃんってつけて?」 「お兄ちゃん大好きですっっ!!」 「もっと言ってほしいな~」 「お兄ちゃん大好きっっ!!お兄ちゃん大好きっっ!!お兄ちゃん大好きっっ!!」 「ありがと。僕も恭子ちゃんの事、妹みたいで大好きだよ」 そして電話を切った。 最低だ。色々な意味で最低だ・・・ でもおかげで元気が出た。あ、携帯は壊さないとね。 「おい慶太!!早くトイレからでてこいや!!」 ふぅ、せっかく人が心を癒したばっかりだっていうのに。 トイレから出た僕はそのまま部屋に戻ろうとしたが・・・できなかった。 「ちょっとツラかせや」 (あのアマの発言について問い詰めてやる!!) そのまま姉ちゃんの部屋に拉致される僕。拷問はやめてね? しかし僕の願いむなしく、姉ちゃんの部屋に入った途端逆エビ反り固めを決められた。 「い、いだだだだだだだだだーーーーー!!!」 「・・・正直に話せば解放してやる・・・結衣とは付き合ってんのか?」 (肯定したら殺すぞっっ!!) 僕の選択肢はどうやら2つあるらしい。このままか死ぬか。どっちも嫌だ・・・ 「つ、付き合ってるけど・・・あくまで仮の関係だから!!」 「仮の関係?」 姉ちゃんの力が若干弱まった。いまが攻め時だ!! 「岡田と太郎君が付き合っているって噂が・・・それを失くすために・・・僕と付き合ってるふりをしてるだけ!!」 その言葉を聞いて姉ちゃんは僕を解放してくれた。 「ふ~ん・・・仮の彼氏役を慶太に頼んだのか・・・」 (それでもウチの慶太に手を出すとはいい度胸じゃねぇか!!カラオケの時覚えてろよ!!) 最近毎週のように修羅場が訪れるのはなんでだろう? 686 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 26 59 ID HLEr4wWp 「それじゃあ遅くなりましたけど陽菜ちゃんの歓迎会ってことで、カンパ~イっっ!!」 「「「「「「「カンパ~イ」」」」」」」 今日は土曜日。某カラオケ店。 メンバーは秋祭りに行った時と同じ8人だ。 だけどあの時とはあきらかに雰囲気が違っていた。 「お、お兄ちゃんの横って・・・緊張するな///」 僕の横には恭子ちゃんが座っていた。 恭子ちゃんのセリフだけを聞くとかわいらしい感じがする。だが今の恭子ちゃんは例の中毒症状がでているのだ。 その症状として僕の腕にしがみついている。 「・・・ロリコン」 ちょっと岡田さん!?恭子ちゃんは僕の妹なんだよ!? 「・・・シスコン」 ちょっと陽菜さん!?妹が大好きで何がいけないの!? 「おいマジかよ慶太・・・ウチのことそんな目で・・・キモッ」 (慶太がシスコン!?マジ!?いやったー!!) ・・・あ~もうめんどくせー。 (慶太の野郎、俺たちを無視して祥子さんとあんなに・・・っ!!) (恭子ちゃんがあんなにくっついてるなんて・・・なんてうらやましいっ!!) (結衣だけでなく女性陣全員を・・・おのれ早川っ!!) お前らはロリコン、シスコン、キモいって言われるのがそんなに羨ましいのか? 「えー!!それでは誰から最初に歌いますかね!?」 殺伐とした中、カラオケ大会が始まった。 「俺がいくぜー!!」 太郎君が曲を入れた。エ○ザイルのl○vers againだ。 何を思ったのかわからないが目をつぶり胸に手を当てて歌っている。ときどき岡田の方を見ながら。 「ふ~、ちょっと音程を外したかな」 まぁ音程はちょっと外したくらいだったよ。音程は。 「どうだった結衣?」 なぜか岡田に感想を求めている。あれ?そういえば岡田と太郎君の噂はどうなったんだろう? 「ねぇ大田君にリクエストしていい?」 岡田が大和に話しかけた。太郎君の質問に答えてやれよ。 「いいけど」 「じゃあね・・・エ○ザイルのl○vers again!!」 あ、なるほど!これが岡田なりの返答なんだね! ちなみに大和は歌がめちゃくちゃうまい。岡田もそれを知っている。 大和が歌い終わると拍手喝采が起きた。 「お前うめーじゃんよ」 「あ、ありがとうございます祥子さん!!」 大和が嬉しそうで良かった。幾度となく裏切りられたが、僕の秘密を知っても友達でいてくれたいい奴だ。 「次は僕ですか」 山田だ。山田は普通の歌を普通に歌った。以上終わり。 「次は慶太だな」 大和からデンモクを渡される。ついに僕の番が来たか・・・ 「慶太さんの歌、楽しみだなぁ~」 本当にそう思うなら手を離してもらえます?右手を固定されるとデンモクを押しにくいし、歌いづらいのですが。 「私、久しぶりに慶太の純○歌が聞きたいな~」 陽菜が僕にリクエスト!?歌っちゃう!!僕、純恋○歌っちゃう!! ルンルン気分の僕だったが、この一言が本日の修羅場第一ラウンドのゴングとなった。 687 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 27 37 ID HLEr4wWp 「純○歌か。わかっ―――」 「ウチはレゲエが聞きてぇな」 え? 「私は○が大好きなの知ってるでしょ?」 もはや何か分からないのですが?ジャニーズの人気グループですか? 「慶太さん・・・g○eeeenがいいです・・・」 「・・・」 これは一体どういう事だろう。僕が4曲連続で歌えってこと? とりあえずお茶を一口飲む。ん~うまい。 「えっと・・・何を歌えばいいのかな?」 「・・・慶太が歌いたいのを歌えばいいんじゃない?」 本当ですか?もし純○歌以外を歌っても怒らないでくれますか? 「・・・別に慶太が何歌ったってどうでもいいしな」 どうでもいいならリクエストを重複させないでください。あなたが最初にかぶせてきたんですよ? 「ズズズ・・・」 岡田さん、ジュースは音を立てて飲まない方がいいよ?なぜかその音が僕の心臓に悪影響を及ぼすからね。 「みなさんが何歌ってもいいって言うなら・・・私のリクエストを歌って下さい!」 あ、違うよ恭子ちゃん。この人たちは私のリクエスト以外を歌ったら殺すよ♪って言ってるんだよ? 「早く決めろや早川!!」 僕がなかなか曲を決めなかった苛立ち(と嫉妬)から太郎君が叫んだ。 しかたがない。ここは一か八かに賭けるしかない! 僕が入れたのは・・・l○vers again。 ごめんなさい。本日三回目でごめんなさい。三回目が一番下手でごめんなさい。 とりあえず歌い終えてみんなの顔を見ると、食べ物のメニューを見ていた。 本当にごめんなさい。 お詫びのしるしとして僕はみんなのためにジュースのおかわりをつぎに行こうと立ち上がった。 「じゃあ俺ジュースつぎに行ってくるけど、だれか他に入れてきてほしい人はいる?」 そう言ってみんなのグラスを見たが、全員のコップにはまだジュースが残っていた。 当たり前だ。まだここに来て4曲、時間にして20分しかたっていない。 「どうしたの慶太?ジュース入れに行くんでしょ?早く行ったら?」 陽菜が冷たい。やっぱり歌いたい曲を歌ったら怒ったらしい。 「そこに立たれると邪魔なんだけど」 姉ちゃん、俺そんなに悪いことしたかな・・・? 「ズズズ・・・」 あ、岡田のジュースは後ちょっとだ!! 「ん?早川まだいたの?」 う・・・うぅ・・・ 「ズズズズズズズーーー、ぷはぁ~!!・・・慶太さん、一緒に飲み物入れに行きませんか!?」 いいよ、分かったよ、認めてやるよ。この瞬間からおれはロリコンでシスコンだ。 「じゃあ行こうか」 そう言って恭子ちゃんと部屋を出ようとしたとき、一瞬岡田と姉ちゃんがものすごい恐い顔をした。 大声が聴こえる!、と身構えた・・・が何も聴こえなかった。 あれ?いつもあの二人が恐い顔をしたときは聴こえたのに? ま、いっか。 このときはあまり深くこの事を考えなかった。 688 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 28 07 ID HLEr4wWp 「どれにしようかな~・・・慶太さんは何飲むの?」 「オレンジジュースかな・・・」 店員の視線が痛い。 (あの二人兄妹?でも顔が月とすっぽんだから違うわよね・・・まさか誘拐!?) ついでに心の声も。ってか客に向かって月とすっぽんとか言うな!それに誘拐したなら堂々とカラオケ店に入るか! 「慶太さん・・・恐い・・・」 「あ、ごめんね恭子ちゃん。ちょっと人間という生き物の道徳さについて考えてただけ」 「?」 「なんでもないよ。それじゃあ戻ろうか」 部屋に戻る道中、恭子ちゃんが僕の顔とジュースを交互に見てきた。 「あ、あのね?え、え~と・・・」 (慶太さんのジュース一口欲しいって言ったらくれるかな・・・?) え?ならさっきドリンクコーナーで飲めばよかったのに。 (で、でも目的が間接キスってバレちゃったら・・・キャ~キャ~キャ~!!) マズい。これは非常にまずい。恭子ちゃんの中毒症状のレベルが以前よりはるかに増している。 「け、慶太さんのジュースひ、一口ほ、ほしいな~///」 (言っちゃった!!キャ~キャ~キャ~!!) しかも結局言い放った!!もしこんな場面を勘の鋭い陽菜にでも見つ――― 「ダメだよ恭子ちゃん?このお兄ちゃんは恭子ちゃんに邪な事を考えた変態さんなんだよ?」 なんだか陽菜さんが突然現れるのがお決まり事みたいな感じがするな。それにまだそのネタを引っ張るんですか? 「そんな変態さんのジュースをもらおうなんて・・・変態さんがうつるよ?変態さんもより変態さんになるだろうし」 変態さんと4回も言われた。もう陽菜の中では確実に僕=変態なんだろうな・・・ 「・・・私慶太さんと同じなら・・・変態でもいいです!」 あらま。それはお兄ちゃんもビックリしすぎて普段使わないあらまとか使っちゃったよ。 「・・・恭子ちゃん・・・この変態のゴミに何て言われたの?」 つ、ついにさんをつけてくれなくなったぞ!?そして生まれて初めてゴミって言われたぞ!?姉ちゃんにも言われたことないのに! 「大好きって・・・私のこと大好きって!!」 恭子ちゃんが大声でそう叫んだ。もちろん廊下にいた人全員がこっちを見てくる。 ・・・お兄ちゃんはいっぱい、い~っぱい言いたいことがあるんだけど聞いてくれる?まず第一に――― 「慶太・・・」 「・・・聞いてくれ陽菜。これには色々と訂正個所が・・・」 「一つだけ真面目に答えて・・・」 陽菜さんの雰囲気がマジだ。それにかわいらしいポーチに手を入れている。携帯でも鳴っているのか? 「・・・その子のこと・・・愛してるの?」 なんだろう?無性にポーチの中身が気になるのは気のせいなのか? 「・・・答えて・・・」 「・・・好きだけど、それは妹としてです。決して異性としての意味ではありません」 こ、これでどうでしょうか? 「・・・分かった。慶太を信じる事にするわ」 そこでようやく陽菜が笑ってくれた。いや、今までも微笑んではいたけど・・・ 「慶太さん・・・私のこと大好きだって言ってたのに・・・嘘だったんですか・・・!?」 え~!?やっと問題解決したと思ったのに、今度は別の問題が勃発!? 「ち、違うよ恭子ちゃん!恭子ちゃんの事を大好きって言ったのは本心だよ!」 「慶太!本当にそんなこと言ったの!?恭子ちゃんに大好きって言ったの!?」 「だ、だからそれは妹として大好きって言ったんであって・・・」 (なにあそこ修羅場~?) (うっそ~片方の女の子まだ子供じゃない?) もう嫌だ・・・誰か助けてよ・・・ 689 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 28 45 ID HLEr4wWp 周りの様子に気付いたのか、陽菜が冷静になった。 「・・・とにかく部屋に戻るわよ・・・話はそこでするから」 陽菜の口調が若干変わっている。そうとう怒っている証拠だ。 「・・・私も慶太さんに真相を確かめたいです・・」 (私のこと大好きだって言ったくせに!!) あれ?何気に恭子ちゃんの方も相当お怒りの様だぞ? 二人に連行され僕は部屋まで強制送還された。 「なんかさっきうるさかった・・・」 大和が言葉を切った。みんなも話し声を止めた。。 なぜなら穏やかキャラの陽菜と恭子ちゃんの二人のオーラが禍々しいものになっていたからだ。 「みんなちょっと聞いてくれる?」 な、何を言うおつもりですか陽菜様? 「コイツがさ~・・・恭子ちゃんに大好きだって告白したらしいんだけど・・・どう思う?」 「「「「「何っー!!」」」」」 「ち、違うって!!だから何度も言うけどあくまで・・・」 「違わないもんっ!!私のこと電話で大好きだって言ったもんっ!!」 お、落ち着け早川慶太!!ひとまずジュースを飲むんだ!! 「おい慶太・・・テメェ13の子に・・っ!!」 「ちょ、聞いてよ姉ちゃん!!」 「彼女がいるのに・・・」 「岡田は仮の彼じ・・・いや、なんでもないです」 みんな言いたい放題だ。確かにあの電話は僕に非が120%あったけど、だからって・・・ 場の全員が烈火のごとく怒り始めたとき、ぽつりと恭子ちゃんがつぶやいた。 「・・・私と彼女さんと・・・どっちが好きなんですか?」 その言葉に静寂が訪れた。みんなの視線が僕に集まる。 (慶太、浮気したことは水に流してあげる・・・だからはっきりと私の名前を呼びなさい!!) (慶太さん、私信じていますからっ!!) 主に岡田と恭子ちゃんの声が聴こえる。 答えられるわけがない。となれば第3の答え。 「・・・俺が好きなのは陽菜だ」 言ってしまった。もっとムードのある場所で言いたかったのに、こんな場面で言ってしまった。 「え・・・?」 恭子ちゃんの顔が絶望に染まる。でも妹として好きなのは変わらないからね。 「・・・っ!」 岡田が苦虫を噛んだような顔をしている。やっぱり僕なんかよりもっといい奴を選べよ。 「・・・認めねぇ」 誰もが静まる中、姉ちゃんがそう言った。 「姉として認められねェな!!慶太にふさわしい女は愛情深い人、つまりウチ以外はいないんだからな!!」 何言ってるんだ姉ちゃん!?告白に聞こえるぞ!? 「何言ってるの!?早川の・・・ううん、慶太の彼女は私なんだから!!私が一番ふさわしいんだから!!」 お・・・おい?お前まで何言ってるんだ? 「黙って聞いてれば・・・慶太さんが一番好きなのは私なんです!!私にだけ大好きって言ってくれるんです!!」 アレ?ミンナノヨウスガオカシイゾ? 690 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 29 18 ID HLEr4wWp 「慶太は秋祭りの時にウチのこと大好きだって言ったんだぞ!!」 「私だって占いで12月になったら慶太が私のこと好きになるって言われたんだから!!」 「何度も言わせないでください!!慶太さんは電話で私のこと大好きだって言ってくれたんです!!」 岡田さんの意見だけが相当弱い。それに姉ちゃんも恭子ちゃんも都合のいい部分だけ抜き出さないで。 混沌とした修羅場が続く中、一つの笑い声が聞こえてきた。 「アハハハハハハハッ!!!」 陽菜だ。一体何がおもしろいのかものすごい笑い声だ。 「みんな醜いな~。慶太がさっき言ったでしょ?好きなのは私だって。あなたたちが喧嘩したところで何の意味もないのよ?」 陽菜の目が今まで見たこともないくらい濁りきっていた。 「それにこの際だからはっきり言うわね?まずは・・・祥姉ぇ」 声をかけられただけだというのに、姉ちゃんが怯え始めた。姉ちゃんが怯えるなんて初めてだ。 「慶太はあんたに同情して好きだって言ったのが分からないの?実の姉のくせして弟を愛しているなんて・・・気持ち悪すぎ」 おかしい。陽菜がおかしい。まるで別人だ。 対する姉ちゃんはいつものように言い返さない。ただ下を向いて何かをこらえているようだ。まさか泣いているのか? 「恭子ちゃんは一体何様のつもりなの?すぐ男の家に転がり込んだりして・・・飢えてんの?」 「ち、違います!!それは慶太さんが―――」 「飢えるの意味分かるの?その年で分かるなんて先が思いやられるわね。言っとくけどビッチは嫌われるわよ?」 陽菜の波状攻撃に恭子ちゃんが泣き始めた。だが陽菜は口撃の手をやめない。 「だいたい他人のくせに妹とか・・・そういうのがマジで男受けすると思ってんの?頭悪いんじゃないの?」 恭子ちゃんの顔が真っ青になっている。心の中で壊れた人形のように、ただ僕の名前だけを呼びながら。 「最後は・・・結衣ちゃん」 「・・・なによ」 岡田は口撃に備えて構えている。僕はただただ見守るしかない。 「正直、言う事は何もないの。結衣ちゃんはかわいいし、みんなの人気者だし、すっごい憧れてるよ?ただね・・・」 陽菜が言葉を切った。多分ここから攻撃に移るのだろう。 「私、結衣ちゃんのこと大っ嫌いっっ!!私だけの慶太を奪おうとするなんて!!顔見るだけでムカつくっ!!」 「は、は~!?意味分かんないんですけど!?だいたい慶太はあなただけの人じゃないでしょ!!」 「私だけの物よ!!私だけが慶太を理解できるし、慶太だけが私を理解してくれるんだからっっ!!」 「物って・・・慶太は人間でしょ!?それを物扱いするなんて、あなたこそ何様なの!?」 「物だよ!!慶太は人間であって私の所有物でもあるんだから!!だから勝手に人のもの盗もうとしないでよっっ!!」 僕の意思とは無関係に話が飛び交っている。なんだかものすごく怖い。 「ぬ、盗むってあなたね!!大体慶太の彼女はわ・・・ううん、口で言っても分らないなら見せてあげる」 そう言って岡田は僕に近寄ってきた。その行為に対し怪訝な顔をする陽菜。 「ねぇ慶太、私と慶太は彼氏彼女の関係だよね?なら・・・」 言い終わらないうちに僕の口が何かでふさがれた。 なんだろう?今までに感じたことのない温かな感触だ。ただ周りの声がうるさく聞(聴)こえた。 「どうだった?もしかして慶太のファーストキスだった?」 そっか、感触の正体は岡田の唇だったのか。どうりで温かかったわけだ。 そんなことを漠然と考えてしまった。 「アハ、アハハハハッッ!!本当に・・・結衣ちゃんは・・・ムカつくなっっ!!」 生まれて初めて陽菜の激昂した姿を見た気がする。 陽菜はいつも持ち歩いていたポーチに手を入れてあるものを出した。 ・・・刃渡り10cmはあろうかというナイフだ。 「ぶっ殺してやるっっ!!」 そのままいきり立った陽菜が岡田に突進した。 691 :サトリビト:2010/05/05(水) 12 30 07 ID HLEr4wWp 「って、うおぉぉぉぉぉーーーー!!」 そんな叫び声とともに飛び起きた。 なぜか目の前には布団がある。それにどうやらここは僕の部屋のようだ。 あれ?さっきまでカラオケボックスにいたはずじゃあ・・・? とりあえず携帯を見る。そこには今日が何の変哲もない平日だという事が記されていた。 どうやら今までのことは全部夢だったらしい。 よかった。本当によかった。でもなんてリアルな・・・ 「ん~・・・どうしたのぉ~、お兄ちゃん?」 隣で眠っていた恭子ちゃんが目を覚ました。 「あ、起しちゃった?ごめんね・・・ってあれ?なんで恭子ちゃんが俺のベッドに?」 「だ、だって・・・お兄ちゃんと一緒に寝るの気持ちいいから///」 そういって僕に抱きついてくる恭子ちゃん。 あれ?なんだか夢のときもこんなに積極的だったような気がするぞ? 「・・・歯、くいしばれや慶太・・・」 あ、あれ?まさかこれも夢なの? それを確かめるために僕は姉ちゃんに振り返る。そして・・・ 「今日はお美しいですよ、お姉さま☆」 「ほぅ・・・いつもは美しくないと?」 フフ、ものの見事に一字言い間違えたみたいだ。 バチーーーーーン!!!! どうやらこれは夢ではないらしい。そのことが分かっただけよかったよかった。 「お兄ちゃんになんてことするんですか!?」 「これは愚弟に対する制裁だ。ってかオメーも何の気もなしに慶太のベッドで寝てんじゃねーよ!!」 「だって私とお兄ちゃんは兄妹だもん!一緒に寝ててもいいじゃないですか!」 「いいわけあるか!来るたびに毎回慶太のベッドに忍び込みやがって!」 「なんでそんなに怒るんですか!?もしかして・・・あなたもお兄ちゃんと一緒に寝たいとか?」 「そ、そんなわけあるかっっ!!」 姉ちゃんと恭子ちゃんが僕をはさんで討論を繰り広げている中、ふと夢であった気になる点を思い出した。 カラオケのときは聴こえるはずの声が聴こえなかった。 冷静になって考えると、最近サトリの能力が不安定になっている気がする。 そういえば以前は強い感情にしか反応しなかったんじゃないのか? でも最近は以前は聴こえなかったはずの小さい声もたまに聴こえるぞ? 一度考えだすと疑問がたくさん湧いてきた。 「しかたないな・・・」 僕は昔サトリの研究を手伝わされた教授の元に行くことを決めた。 「え?ち、ちょっと待て!し、しかたないってお前!?」 (え?嘘!?慶太がウチと一緒に・・・一緒に寝るって!?) 「お、お兄ちゃん!?本気なの!?」 (嫌だぁ!!そんなの絶対にダメ!!お兄ちゃんと一緒に寝るのは私だけの特権なんだから!!) ・・・はぁ・・・もう好きにしてくれ・・・